寄稿
名門校の学生でも返事1つで判定する寮母さん
下村 和弘
下村さんは常に若々しい2周り以上の後輩である。ノースウエスタン大で教えながら、腸内細菌やでんぷんなどの分野で、色々おしえてくれる研究者でもある。 シカゴ(日本人学校)双葉会でも講師を勤めておられる多能な忙しい方である。
下村さんは常に若々しい2周り以上の後輩である。ノースウエスタン大で教えながら、腸内細菌やでんぷんなどの分野で、色々おしえてくれる研究者でもある。 シカゴ(日本人学校)双葉会でも講師を勤めておられる多能な忙しい方である。
最近はSNSが一般化しているが、下村さんは「見かけも大切」と言いながら、もう少し深いと聞こえる。(着色、見出し、フォント編者)
見た目はあなたの一次予選
最近、生徒とのやりとりをメールでよくしていて思うことがある。みんな、見かけをよくする ことを意識していない。メールで損しているなと思う。
『人は見かけではない』。私が子供の頃、 祖父母によく言われていた言葉だ。私は、これをずっと「見かけで人を差別してはいけない」と いうことだと思っていた。しかし、歳を重ね、その真意を「(良いか悪いかは別として)人は他 人を見かけだけで判断する先入観の塊である。だから『人は見かけではない』と言って戒めてい るのだ」と思うようになった。人は見かけだけではないが、見かけはとても大切であると言える のではないか。
アメリカのWork Study Student
アメリカの大学には“Work Study Student”という制度がある。私の 20 年来の知り合いの女性 は、研究室で Work Study Student の選考に長く携わっている。Work Study Student とは学内で働き ながら、収入を得る生徒のことだ。その経験は履歴書に書けるので、卒業後、就職、大学院、医 学部への進学に大変有利になる。
彼女はそこで Lab Mom と呼ばれ、文字通り研究室のお母さん 役を担っている。 学生は彼女のお眼鏡にかなわなければ、研究室では働けない。先日、どうして いつもあんな良い子ばかりを見つけられるのかと尋ねたところ、彼女はシンプルにこう答えた。
「最初の15秒でわかる、その子の笑顔を見れば。」生徒の学力は大学内ではそれほど差はなく、 仕事は一から教えなければならないので、履歴書に書かれた経験は実はそれほど関係ないそうだ。 笑顔で彼女を安心させてくれる学生が一番、そういう学生は他のメンバーとも必ず上手くいくと 言っていた。笑顔には強い印象効果がある。そして、それは人を魅力的に見せる最高にして最大 のテクニックなのだ。
T大ボート部のばあさん(寮母)の人物判定
私は彼女と話をしている時に、大学時代にも同じようなことを言われたことを思い出した。私は 大学時代の 3 年半、ボート部の合宿所で生活していた。その厨房を取り仕切っていたのがバアさ んだ(自称バアさん、当時60歳)。バアさんは 30 年以上の寮母経験から、どんな学生がボー トで好成績を残すか知っていた。バアさんの口癖は、『挨拶ができない人間がボートで勝てるわ けがない』だった。そしてこの挨拶、レベルがあり、それによって受ける印象が異なるという。 ここで彼女の挨拶の基準を紹介しよう。
レベル0:おはようすら言えない。
レベル1:おはようございます、のみ。
レベル2:おはようございます、それから天気のことを話す。
レベル3:おはようございます、それから今日のボートの調子を話す。
レベル4:おはようございます、バアさんの作ったご飯を褒める。
レベル5:おはようございます、バアさんの服や髪型を褒める。
バアさんへの挨拶は、『おはようございます』と、ただ言うだけではダメなのである。この『お はようございます』の後の一言二言で、彼女に自分の笑顔を見せ、彼女を笑顔にしなければいけ ないのである。バアさんは常々『この合宿所は社会の縮図。私に笑顔でオベンチャラ一つ言えな いような人間は社会では通用しない』と言っていた。挨拶はコミュニケーションの入り口だ。人 を笑顔にする挨拶はそこからのコミュニケーションを向上させる強力なサプリメントになるのだ。
あれから30年近くが過ぎ、コミュニケーションの仕方も大きく変わった。直接的なやりとりか ら電話、メールへ。直接だったら笑顔を見られる。電話だったら、声のトーンなどで笑顔が伝え られる。じゃあ、メールで笑顔を伝えるにはどうしたらいいのか。それは、バアさんの教え『挨 拶の後に加える一言二言』がキーになるのではないか。
大学入試問題への学生からの礼状評価(シカゴ補習校)
先日、大学入試の過去問題の手書きの解説を補習校の生徒にメールで送った。その時に私がもら った返信を例に挙げて見てみよう。以下、私が考える5つのレベルだ。
レベル0: 全く返事がない生徒。(残念)
レベル1:『ありがとうございました。』だけの生徒。
レベル2:『お忙しい中、大変ありがとうございました。』とやや丁寧。
レベル3:『お忙しい中、大変ありがとうございました。わからないことが
あったらメ-ルしていいですか?』自分の意見が入ってきた。
レベル4:『お忙しい中、解説大変ありがとうございました。この分野、
現地校でまだやっていないので大変助かります。』感謝の内容が
明示されている。自分の感想が具体的。
レベル5:『お忙しい中、解説大変ありがとうございました。手書きなんで
びっくりしました。週末父親と格闘します。』完璧!父親と格闘
している姿を想像すると思わず微笑んでしまう。
人は見かけだけではないが、見かけはとても大切。印象が良いに越したこ とはない。 通常、その人の印象は見た目や声でほとんど決まってしまう。 しかし、視聴覚情報のないメールの場合、受け手は何を手掛かりに判断す るのだろうか。
それは言葉だ。言葉でも目に見えない相手に自分の笑顔を 想像させることができる。自分の笑顔を相手に想像させ、それで相手が笑 顔になってくれれば、あなたの好感度は必ず上がるはずだ。 (編:渡邉和子シカゴ双葉会 日本語学校補習校 月刊高等部 vol.3 2018.6.)
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