2015年7月13日月曜日

15221-(3) 大学教育のありかたについてジム 塚越氏の寄稿

15221-(3)加筆



大学のありかたについて;(4大卒より短大が必要)
  以前にも掲載したジム塚越氏の寄稿です。(フォント・着色編者)

『大学はどのような人材を養成すべきか、が日本では繰り返し議論されています。去る527日付日経新聞に、大学をグローバル人材を育てる「G」と、ローカル人材を育てる「L型」に分け、大多数のL型大学は職業訓練校化すべきという論が紹介されていました。これは昨秋に文部科学省の有識者懇談会に、経営共創基盤の富山和彦最高経営責任者が提言し大きな反響を呼んだものだそうです。

今回はこれを考えてみました。
このG型大学とは、グローバルで通用する極めて高度なプロフェッショナル人材を育成し、他方、L型大学は生産性向上に資するスキル保持者を育成、とあります。富山氏の補足説明として経済学部の例が引き合いに出されています。
「経済学部はどの大学でも基本的にはエコノミスト養成的なカリキュラムになっているが、卒業生の99%は普通のビジネスマンになり、全く役に立たない。

経済学部で実学として教えるべきなのは簿記・会計だが、現実には東大の卒業生でもできないのが非常に多い」、「簿記・会計は企業を分析するときの最も基礎的な言語で、身につけなければ企業の分析はできない。

他の分野も同様で、プログラミングの基本的な構造を知らないと、コンピューターの世界でものを考えることはできない」とあります。
そして、「G型大学は全国に10校で十分、その他はL型ないしは、米カリフォルニア工科大のように一部の研究領域に特化したグローバルニッチ型を目指した方がいい」としています。

経済学部卒(経済原論専攻)で会計士業を営む小生の体験からひと言を。
米国には会計士養成学部とも呼ぶべき会計学部が存在します。すべて4年制で、教養科目も含まれるものの、目的は卒業後に会計士試験に合格することにあり、まさに実学コースです(米国の会計士資格は日本の会計士と税理士双方を含める)。
これまでに接した多くの会計士はこの会計学部の卒業生ですが、気になるのは視野が狭いこと、Howには秀でているものの、WhyWhatへの関心が薄いことです。金融危機に際しても、財務諸表の分析には能力を発揮するものの、何故に危機に陥ったかという事象の分析に関心を抱く者は周囲にはほとんどいませんでした。これが一部のウォールストリートのエリートの暴走を許す背景になっています。経済活動とは金稼ぎと金勘定の世界という短絡的な思想の持主を生むのはこのような視野の狭さから出たことといえるでしょう。

変革は現状を思い切って否定することから生まれるもので、富山案もそこが目的なのでしょうが、日米を比較して奇異に映るのが、改革へのアプローチの違いです。富山氏の主張のような、国が制度として上から改革を押し付けるというアプローチには、大学内部からの改革・変革は期待できないという、上から見下した視線が見えます。
先日には文部科学省が人文社会科学系の学部の廃止・分野転換をすすめる通知を出しています。これも同じアプローチの仕方です。日本以上に大学が林立する米国ですが、ホワイトハウスが大学改革を唱えるシーンは出現しません。

市場が変化を遂げ、大学への期待と提供する人材との間に大きな乖離が生じれば、その大学の存在基盤が揺らぐのは、需要と供給で成り立つ市場原理から当然のことで、大学運営の当事者が先ず体感することです。有識者懇談会や文部官僚がそれを大学当事者よりもより強く感じているということなのか。対応するのは当事者であり、対応できない学校が市場から消え去るのはやむを得ないことでしょう。
具体的な改革は当事者に任せ、有識者や官庁はそのような市場原理が機能するための規制排除や、各校が切磋琢磨をする制度の実現を提言すべきなのでは。
景気の回復で米国内の一部には人手不足が見られます。
最近の報道による人不足が顕著な業種は次の順になっています。

Skilled Trades (大工、佐官、配管、自動車修理、電気工事従事者など)
Drivers
Teachers
Sales Rep (営業担当者)
Secretaries, Administrative Assistants, Office Staff
Management (中間管理職)
Nurses
Technician (コンピューター技能者など)
Accounting & Finance Staff
Engineers 

 勤務地や環境にこだわらなければその日から給与を手にすることができる職がゴロゴロしているともいえます。大工の全米平均賃金は年65,000ドルで、時給に換算すれば30ドル強。マクドナルドの従業員が低賃金で生活が成り立たないと抗議する直ぐ脇に、人手不足筆頭のこの高給職場が存在する奇妙なミスマッチが今日の米国の姿です。
 
これらの求人難の職場のうち、免許の有無から大学卒を必要とするのは、教師や看護士、会計士などごく限られ、求人側が求めるのは、卒業免状ではなくそれぞれの職に必要な知識・技能ということになり、このような市場のニーズだけを考慮すれば大学は不要で、専門学校を数多く設けるべきでしょう。
 それにもかかわらず大学が存続するのは、求められるのは、4年間に身に着ける技能ではなく、中等教育ではカバーしない深い教養・一般知識だということになります。次回は大学在学中に取得する知識・技能とはどの程度のものなのかを考えてみます。』

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