2016年4月5日火曜日

16014(1) 「アリババの野望」にみえる中国投資の今後


16014(1)

「アリババの野望」にみえる中国投資の今後

「アリババの野望」Wang Lifen日本語版を読み、中国のインターネット商取引や情報産業への外国からの投資にたいする問題と政策が透けて見え始めた。(カッコ内、着色編者)

外資の中国投資の問題点が明らかになり始めた

それはアリババという中国のネット市場での通販を始め巨大化した会社だ。その拡大の際に出資した日米の代表的な企業があったことから問題点が見え始めた。03年に創業され、投資した当時のアリババはカタログ販売をネットで行う、いわゆる通販会社でタオバオ社であった。

その後、雨後のたけのこのように市場に参入してきた競争相手との差別化のためもあり「代金を事前受領(前受け)し、商品が引き渡された後に支払いをおこなう」アリペイという、信用供与を代行するサービスを始めたのは04年10月である。
(10年余り前の2005年ころは、中国では銀行融資の25%は不良債権といわれ、企業の経理の仕事は、支払いを遅らせることといわれていた。アイペイの業務が融資あるいは与信という行為なら、規制される事業であろう)

これは支払っても満足なものが出荷されない悪習や、出荷者への支払いを意図的に遅らせる悪弊の問題を解決する面で画期的なサービスであった。その1年後にはタオバオのネット取引は70%がアリペイで決済された。そして13年末にはアリペイのユーザーは3億人近くにのび、1億台を超える携帯電話による決済は27.8億件、金額は9千億元に達したという。(イーロン・マスクらの創業した米国のPaypalはその先例となったと見られる電子支払い会社で、02年に15億ドルでeBayに売却された。)

「アリババの野望」のこの部分に戻り(207~208頁)、ジャック・マー氏の「自社の自由な経営を脅かされる」と感じた理由を考えてみた。少しややこしいのはヤフー(米企業)とヤフー・チャイナ(中国企業)の両社のあいだでのアリババの関係である。
同書によれば、当時のネット検索サービス会社のシェアは表のとおりである。

社名
2004年
  シェア%
2005年
シェア%
シェア増減
百度(バイドウ)
33.1
46.5
+13.4
グーグル
22.4
26.9
+4.5
ヤフー・チャイナ
30.2
15.6
-14.6
  小計
85.7
89.0
+3.3

ヤフー(米国)がアリババの39%の株主なので、2008年にマイクロソフトがヤフー(米国)の買収の打診してきたことに警戒、ヤフーの持つアリババ株を買い戻すための資金準備をしたという。ソフトバンク・孫正義氏(日本企業)、ヤフー(米国)のオーナーが日本人と中国系米人で、アリババの経営妨害はしないだろう。しても何とかできると考えているが、米人だとどうなるか分からない、、という推測があったのではないかとしか思えない。

そこで、マー氏は元英語教師ということからの律儀さ・愛国心からか、国からの圧力かは不明だが、「国、顧客、従業員、株主の利益を守る必要から、この案件に大きな関心を寄せている(以下略)」と意見を述べている。

アリババはネットビジネスで中国を代表する会社だというより、アリペイにより信用を供与する点では銀行と類似の機能をもつから、銀行法などによる営業許可を受けて参入すべきだが、それを怠ったという恐れは05年の中央銀行の意見書(警告)が出ていたからである。その恐れは、2010年6月に意見書と同文の銀行令がだされ現実化したのだ。

中国人民銀行(中央銀行)第2号令「非金融機関決済サービス管理弁法」で第三者決済サービス提供企業の資本はすべて中国企業による、外国企業が入ってはならず、完全に中国資本で成り立っている企業でなければならないとされた。そこで1週間後に残り30%はマー氏の所有とする行動にでて、08年8月までにアリペイは全資産をマー名義に移した。(この行為は日米では違法であろうし、外資企業がここまで素早く行動できるか疑問である)

この行為は、その後にアリペイの事業が伸びて黒字転換したことからも、1種のインサイダー取引ともみなされ得るばかりか、取締役会の議事録になかった点でも、マー氏の倫理性に疑問が突きつけられたという。(中国政府は外資に対しても、ここまで気長に黒字化する寸前まで待ってくれたか疑問という見方もできる

だが中国の世論では、姑息な「”チンピラ手続き”でも愛国者であることを示し、中国に戻ってきておめでとう」という祝辞がツイッターに載せられたという。要するに外資の利益よりは、国有化利益を優先する国なのだ。投資した方も急成長で儲けたのだから1部は失っても仕方あるまいと考える覚悟のいる国である。

これらは11年に米国証券取引委員会に四半期の報告で情報が提出されてから明るみに出たもので、SNSとメディアが疑惑を持ち始めたのだ。なお米国での株式上場は2014年9月であり、過去四年間の財務情報の提出を求められたが、2011年の提出は、それにも間に合うものではあった。


0 件のコメント:

コメントを投稿