2016年7月7日木曜日

16023(2)英国のEU離脱と不透明な今後(2)(1)

16023(2)

英国のEU離脱とその影響(2)

明らかになってきたのは英国を仲間に引き入れたい国々が、綱引きをしている内に自国に亀裂走り国が割れてしまう事である。

EUに参加した英国連邦のスコットランドやアイルランドもそうだし、スペインほかにも飛び火している。日本でも、沖縄では基地反対をやっているが、北海道でも東京でも起きている。EUなどはロシアしだいで北欧諸国にも影響がでる。

下表は英国の外国うまれの労働者数の比率だが、01年から10年で倍増している少し急ぎすぎだろう
(https://en.wikipedia.org/wiki/Foreign-born_population_of_the_United_Kingdom)
CensusForeign-born
population
Percentage increase
over previous decade
Percentage of
total population[3]
19512,118,6004.2
19612,573,50021.54.9
19713,190,30024.05.8
19813,429,1007.56.2
19913,835,40011.86.7
20014,896,60027.78.3
20117,505,00053.311.9
20158,461,10213.1
英国がこの25年で外国生れの人口を91年6.7%から15年13.1%へと倍増させてきたのが明らかである。EUとはアジア市場の奪い合いが起きて混乱している。


人民元を扱いシティーの復興を条件にしたのか不明だが、キャメロン首相が欧州勢を率先してAIIBに加盟したのをみた。米国の指導層が落胆を隠さなかったのは昨15年3月のことだ。人民元をドル、ポンドに次ぐ国際通貨とし、欧州の取引市場としてシティーがドルに挑戦する中国を浮上させる姿に見えた。
結果として南沙諸島の中国による軍島化がアセアンの結束を招き、インドまで警戒させた。EUの難民とアジアでの結束は予期せぬことだった。

中国の影響が背景にある

しかし、英連邦のオーストラリアが北東の港を中国に租借させる契約を結べば、これは東アジア防衛戦略の問題であり、次はインドネシアのゆくえを考える方が自然だろう。 (これは日本にとっても好ましい動きではない。広いオーストラリアの半分を中国が買収する前に、パースあたりを拠点にして、アセアン諸国が共同事業でも始められないか。)

チャーチルの願いで英国を助け太平洋戦(対日独伊)に参加し、戦後は対ソ冷戦でナトーで受けた米国への借りも、中国の台頭で一変したかのような現実主義の政策が見えた。 その反撃かは不明だが、
パナマ文書で合法・非合法なタックスヘイブンのリストがリークされ、その30%が中国だったとか、欧州の著名人の名も取りざたされている。

中国内では報道管制にして、表現の自由を認めない強権政治は、やり易い仲間増やしだが買収と贈賄で、民主化は進まない。共有する価値観がないから、長続きしない関係だ。
貿易で稼いだドルで、相手国から買うものがなければ会社や不動産を買収するやりかたは元は低く抑えられるが、外資投資が引き上げ始めると経済面で不安定化する。

元の増刷により自国通貨を水増しすれば、人民元のインフレ=輸入品の物価高が不満をもたらす。中国との付き合いでは相手国との関係は、どちらが先に衰退するかの喰い合い、サバイバルゲームになり、日本式の共存ではない。

英国の国民投票の前には、独立党(IP)が移民問題を大きく取り上げた影響で、離脱に票を入れた人たちも、EUの1員への迷いはありそれは自然だ。失業率のたかい若者には、EUの職場としての魅力があり、中高年庶民には国としての「英国」との押し合いなのだ。
パイの縮小はいかに英国に不利か」と知恵を絞って、ねばり腰で英国人に呼びかけ、メディアは大きく騒ぎ立てるが、EUか英国か誰のための選挙なのかがファジーになった難民に貢献した人権派=残留派女性議員が犠牲になった。

英国内では自国の問題にEUのベルギーを始めとする小国が内政干渉して、とやかく言われるのは腹立たしい。忍耐心が減り1億総庶民化した日本人なら「うるさい黙れ」と言いたくなるのだろう。大体ドイツ・フランスの戦いをやめさせるのが目的であったEUには、英国は関係ない。加入したのはEU市場の大きさが魅力である。ウクライナの東はトルコでドイツと親しい。ロシアかトルコかでは明白ではないし、その先をユーロでゆけば人民元の世界とぶつかる。本音の懐かんじょうはこの辺にあるだろう。
英国は中国をとるか米国をとるか、二股でゆくかが重大な岐路だろうと感じる。

極東にありながら、欧州から独立の立場をまもり、敗戦後は米国に守られ影響を受けつつ、その憲法を変えない親大陸派を主張する野党は、英国でならさしずめ残留組か。今回のあり難い英国の体験は日本のためのテストに見える。
総庶民にとっては、共有価値(民主・人権・法治)がなく、人口を武器にした腕力、汚職、賄賂だけの隣国は、脅威だけで、人工頭脳の時代に日本の指標にはならない。

中国の努力は姿を現し脅威になる

武力での脅しを拡大しつつ、日本国内の移住者による買収工作を進めているといわれる中国は、欧州への1帯1路を繋げ、自国の商品の販路を維持したいだけだろう。
過剰在庫の解消のためにもAIIBにも投資を呼び込み、欧州市場では日米を締め出したい。手段をかまわず中央アジアやアフリカからでも参加国の数をふやしているのだ。
正に「China2049」(マイケル・ピルズベリー著・訳)そのものが行動に移されている。だが国内で選挙も出来ないのでは、台湾と同一国とも言えず、説得力に欠けるし、南沙諸島では国際法無視でどう国際化できるのか

国内では選挙もしない国が、海外では多数を仲間に入れるための、すさまじい多数派工作と、基礎能力に欠けた高速鉄道の売り込みは無理があり、インドネシア、タイ、米国などでキャンセルが相次いでいる。
無論アジア市場は「ワシのもの」で、南沙諸島に口は出させず、マラッカへの直行便も増やすなど全方向の努力に、ロシアも引き込まれる(ふりをする)か。これが裸の力の国際社会なのだと日本の親中派にもみせてくれたがのは結果として良かったと感じる

裏返しで、日本はアセアン市場を確保し、インドを仲間に将来の人口大国を市場として広げてゆくしかない。軍事教練にもインドが参加して、中国も少しは考えがかわるだろう。
英国はEUの鎖をはずし米・カナダ・豪州・NZに加え、日本ともFTA関係になるほうが有利という考えと、これから人口減少の中国に賭けるかの間でゆれていく。
日本も何でも自国でつくらず、仲間づくりの3国関係を強める協力を拡大するだろう。

そう考えると日本の海外での輸出国との交流は単なる輸出では終わらず、どうしても相手国のものを同額輸入しないと長続きしないと気づくだろう。それらの国々や周辺国の人材もいれ、サービス産業、特に人手の不足している育児・介護に日本人がさけるように、他の職種分野で雇い働いてもらうわないと、夫婦共働きを前提とする1億総活躍はできない。その点、全国の土砂崩れを防止する傾斜地の工事は災害対策としても長期に有望だ。

ドイツの場合は、近隣諸国が協力工場化しているが、VWのような燃費測定のごまかしが露見したりで、短期の対策に追われ、EUの債務処理で金融面でも忙しい。中国と関係して汚染されずにプラスの結果となる国はまれで、無傷ではすまないだろう。

 人材不足は英国も日本もおなじ

以前に英国は計画的に海外からの移民の計画を持っていると述べたが、これをきちんとやってきた英国でも、最近のディジタル化とグローバル化の波におくれた労働者の不満が相当に強く、今回の選挙でも、ロンドン周辺をのぞく英国の南半分は、離脱に投票した市民が多かったと報道された。北のスコットランドは残留希望であり、国内が割れるのか。


不幸中の幸いで今回の離脱ショックは株式の暴落も08年のリーマンショックに比べれば、かなり軽くすんだようだ。 だが金融ショックではなく政治ショックは深刻で、退陣したキャメロン首相の後任に手をあげ始めたが、先が見えないのだ。

むしろこの影響の方が大きいのかも知れないと、やや深刻な気持ちになってきた。
日本は参院選の最中だが、国内与党よりは近隣国びいきらしい野党が団結などと聞くと、「民主主義が不在のEU」などと笑えない状態なのかも知れない



海外からの報道がだいぶ早くなってきたNHKには、他では様々な不満があるが、多少は安堵している。不満のほうは、中国のご機嫌とりのためか、それとも相手国の報道管制を守っているのか知らないが、事実を分かりやすく国民に知らせておかないと、突如説明もなく攻められておりますなどと報道されても困るのだ。


今後の方向

EUは無論のことだが、社会主義政策を見直し、競争原理を増す経済拡大のような代案を提示して、英国の離脱をさせずにまとめたいと考えるか。英国内の政治をかく乱しても2%以下の低成長で、移民や難民問題を吸収できるか。ユーロの利点は総貿易量が大きく安定してこれたが、国防は域内自力でやれるのか疑問がのこる
英国としてはシティーの存在をユーロに取り込まれたら、留まる意味がないという計算は残るのではないか。

米国はアセアン・インドをとりこむために日本を利用した同盟をつかい強化したい。ロシアを取り込む宇宙協力などで、中国の脅威を押さえたい。EUのウクライナなどは構っておれないというのが内心だろう。中国の中にも親日派を増やしたいが政治優先で難しいだろう。
EUは少数精鋭の財政規律のある北欧でまとまる方が良いという金融系の経営者達の意見が主流で、ドイツが中心でまとまればよいが、難民問題で協力するトルコが揺すぶられている。小さくなったEUで欧州の政治がまとまっても、安定のためには大きな不安が残る。すでに少なからぬイスラム系の難民がいるからだ。

そこで縮小均衡のフランスがどうするか。ベルギーのイスラム僧が、寺院内に監視カメラを受けいれたいという提案を報道で聞いた。
テロ対策の強化で協力できるなら、会社勤務中の信徒の礼拝は、午前・昼・午後各1度にし、朝夕は自宅で礼拝してするようにできればどうか。
社会での差別を防ぐために、寺院も少しは柔軟になり受入国のルールで生きる妥協の余地があるのかもしれない。と言ったオーストラリアのリーダーに賛成だ。

韓中が要注意なのは日本を弱体化させることばかりやる印象があるからだ。この25年間、この2国が良い貢献を返してくれた例を殆ど思い出せないのだ。極端なことを言えば、この巨大国は過去30年の日米の恩恵で経済が拡大したが、米欧などに金を不動産投資の形でばら撒いてしまい、借金だけが国内に残っている可能性がある。

金を追いかけて党の指導者が大挙して国を出てしまえば、中国には鬼城(ゴーストタウン)が残り、産業は海外での買収不動産や会社が主体になり、国内の産業は競争力がないのかもしれない。これらを売り切るのに数年かかり、その頃は日本の10倍の数の高齢者が退職するから、福祉コストが追いかけてくるだろう。
1番の問題は国有だから、民営化すべきなのだ。いま日本に対し軍事的に挑発を繰り返しており、何が起こってもおかしくない状態に見える。

16023(1)

英国のEU離脱とその影響(1)

『EUは英独仏を中心にして成立したから、英国の離脱はEUの終わりの始まりだ』という声も大きく、米国でも金融面や経済面での影響の大きさが議論されている。
だがこれは本当なのか? 一寸違う気がしている。

英国とEUの関係については

「欧州解体」(ロジャー・ブートル著・町田敦夫訳)では、第1ページにメルケル首相とチャーチルの言葉で始めている。(原著の表題は「解体」ではなく「ヨーロッパの問題」)
メルケルは「ドイツにとって欧州は絶対欠かせないアイデンティティーの重要な1部で」「ドイツ統一と欧州統合は同じコインの表裏」であると述べた2011年の発言がスタートだ。どっぷりとEUの中核国の宣言である。

他方でウインストン・チャーチルのヨーロッパ合衆国を樹立し、家族を再生する第1歩は仏独の努力」と1946年終戦の年の発言を引用している。だが、チャーチルのヨーロッパには英国は入っていなかったのではないかと私(編者)は思う。

EUの5つの主導的信念は英米には軽視された?

1957年に最初の6ヶ国がローマ条約に調印し、1973年にデンマーク、アイルランド、英国の3ヶ国が参加しした。1988年マーガレット・サッチャー首相は加盟国の関係が「深化」するのには消極的で、「拡大」には積極的であったという。つまり英国は国としての1体化には賛成せず、市場統一と拡大を考えていたのだと読める。
おまけに「大きな企てであれば特に、人は自分のしていることに信念を持たなければならない。アングロサクソンの自由市場派エコノミストはしばしばこの点を見逃し、欧州大陸の統合主義的な動きをひどく過小評価してしまう」とまで言う。米国も含めてだろう。

EUの主導的信念は  欧州戦争を避けたい、 1つにまとまるのが自然だ、 経済・政治ともサイズがものをいう、アジアからの挑戦に対抗、 統合は不可避であるとの思い、
米ソの2大超大国に挟まれて自衛のためにまとまりたかった。
しかし戦後のEUは米国からGDPの1%の支援をうけていた事もあり、まず経済再興・成長をすればよいとされた。
(この点は、まずは復興で、借り物憲法でもOKな日本と余り変わらないが、旧敵国と隣接していたドイツは放っておけなかった違いはある。)

『制度が粗悪に作られ、主要な経済的イデオロギーが国家統制主義者や干渉主義者のそれになってしまうと、統合が緊密化するほど経済成長は阻害される』というような心配は共産主義が崩壊し、新興市場が台頭してからおこったという。
また米国も「欧州の民主主義の欠如に気づかなかったこともあったし、君主制を残す英国の民主主義も不完全形と考えているのではないか」という。

EUの統合には英国はフルメンバーとしては参加できなくなった

1995年の国境をフリーパスにするシェンゲン協定には、仏、独、ベルギー、ルクセンブルグ、オランダ、スペイン、ポルトガルの7カ国がマースリヒト条約を結んだ。だが英国は入らず、2013年に27カ国にEUが拡大しても加わらなかったが、これは上にみた経緯から考えると、分かりやすい。まして英国ポンドをユーロやドルと対抗して維持し続けるのは、基軸通貨ポンドでの通貨経験をもつシティーの金融で儲ける能力を維持する帝国を維持したプライドと、工業的に優れるドイツとのバランスを考えている証拠だろう。

EUは戦争を避けるために1つに纏まり、それは大きくなれば経済や政治にも大きな影響力が持てるという欲も透けて見える。再統合というのは、神聖ローマ帝国以来というドイツを中心とした時代の再現という夢でもある。
ソ連邦の崩壊で、東欧諸国の受け皿にもなろうという「民主主義、法の支配、人権、少数民族の尊重と保護を保障する」夢だけで、各国の具体的なこれらの条件の採用の程度もいい加減である。「EUのミルクカートンの寸法まで統一をいう馬鹿げた連中の指示を聞きたくないという考えがある」と28日朝もハーバード大サマーズ氏はいう。

シェンゲン協定に「社会福祉をえるツーリズムと雇用される労働者を抑えたい」という条件つけは、キャメロン首相も提示しており、日本でも移民の条件とすべき問題であろう。 

その意味から、国内で信用や信頼というビジネス社会の核がはっきりしない中国が国際インフラ銀行を目指すのは、急ぎすぎとしか言えない気がする。
欧州との窓口に英国を期待していた中国はロシアと現状の関係見直しと、台湾が「1つの中国」を表明しないため、ホットラインを停止したという。よく言えば、恐らく中国もロシアも孤立化を避けたいのであろう。

いずれにしても、英国は何もかもかなぐり捨てた訳ではなく、短期的にはリーマン級のショックがあるかも知れないが、長期的には英国の相対的な地位・影響力は増すだろう。問題は移民による経済の成長と、英国民の雇用をどう維持するかである。2~3年の離婚交渉の後はどういう景色がみえるか、、である。

今回の離脱劇は、国の自立の条件と、他国との環境・条件つくりの困難さをあきらかにしてくれた。もう少し考えてみたい。


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