2019年8月23日金曜日

アメリカ人になるか、永住権者のままか-選択のポイント (寄稿 )




(寄稿)

アメリカ人になるか、永住権者のままか-選択のポイント


多くの米人にも勧められた理由でもあり、私自身も本当に悩んだことで、サラリーマンで過ごすか独立するかも含め、当を得たアメリカらしい多数の視点で述べておられ、ぜひ一読をお奨めします。

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CDH会計事務所
社長・マネージングプリンシパル
藤本 光 氏
  永住権者マニュアル
私は1982年にF-1ビザで米国に来ました。H-1ビザで仕事をした後、グリーンカードを取得後2006年ごろに米国籍を取得しました。今回は、米国籍を取得するのか、永住権者のままでいるのが良いのかについて、私の個人的な考慮ポイントご説明します。
大きなテーマですので包括的には説明できません。そこはご容赦ください。
1、アメリカでの仕事で成功したいなら、米国籍。
日本企業がアメリカ市場で成功しようと思うなら、米国に子会社を作るように、個人的にアメリカで本当に成功したいなら、市民権を取るのが大切だと思います。日本語には「骨をうずめる」という言葉がありますが、骨をうずめる「覚悟」をもって仕事をする  “Attitude”が大切だと思います。
もちろん永住権保持者の方でも大成功されている人も多数いらっしゃると思います。
2、米国人としての税務と永住権の税務
国籍を取ろうが取るまいが基本的には税務に関しては変わりはほとんどありません。基本は、アメリカの居住者として全世界の収入を申告して、アメリカ国外にある資産を開示する義務があります。開示しないと大きなペナルティが取られて、大問題になります。
実はこの開示義務を嫌い最近米国籍を離脱する人が増えているようです。
3、米国籍の離脱と永住権の放棄
永住権の放棄は簡単です。I-407をHomeland Securityに提出と8年以上永住権を持たれた方はIRSにForm 8854を提出します。ある一定以上の資産をお持ちの方は出国税(Exit税)を取られることがあります。永住権は放棄されても、再度取得することができますが。再取得はもちろん簡単ではありません。
米国籍離脱の場合は複数のインタビューを受けないといけません。コストも今は$2350かかります。そして一度放棄したら再度取得することはできないと思います。(”Irrevocable Act”になります。)出国税がかかるかもしれないのは永住者と同じです。
4、日本と米国の社会保障制度比較
私は社会保障の国際比較の研究者ではないので、ただの偏見かもしれません。しかし肌で感じるのは、米国の社会保障制度は日本よりかなり劣っているということです。日本はきっと欧州の先進国と同じように社会保障が手厚く、自分で準備しなくても、それなりに政府が介護なり、医療なりで配慮してくれる。しかし、アメリカは自由度が高いからこそ、自分でしっかり準備していない人には大変冷たい国だと思います。
例えばアメリカの生命保険は日本の生命保険の半分くらいの価格になり、生命保険の種類も多いし、かけられる金額も大きいですね。”Estate Planning” などや個人の貯蓄にも生命保険の商品は広く使用されています。これなどは自己責任重視の国であるアメリカを良く表していると思います。
ちなみにCDHでは生命保険も扱っておりますので、ご興味のある方はご連絡ください。アメリカの居住者であればだれでも購入ができます。
5、日本の領事館の援助
当然なのですが、米国籍になると日本の領事館に助けを求めても助けてくれません。日本は例外はありますが基本的に二重国籍を認めておりません。私も市役所で戸籍離脱届を出したひとりです。米国人になったとたんに、日本の国の保護は受けられません。
逆に米国政府の助けというのは特に海外に出た場合に得られるのでしょう。
6、相続税
アメリカの相続税(Estate Tax)は読者のほとんどの方は関係ありません。連邦税で日本円で 12億円以上の資産がないと発生しません。しかし日本の相続税の免税限度はこの金額に比べて遥かに低いです。
日本の相続税法では受け取る人、贈る人、が日本の国外に10年以上いる場合は日本にある資産にしか日本の相続税がかからない仕組みです。つまり、米国籍であり、永住権者であれ、将来日本に帰って住む予定がない場合は、米国に資産を移されるほうが良いと思います。
ちなみに住民票を入れてしまうと、日本の居住者になってしまいます。
7、自己管理能力の低下
どんなに頭脳明晰な方でもほとんどの方は75歳から80歳を境に理解力、適応力が低下します。すでにこの世にいない私の父は亡くなる89歳まで日本で株をやっていましたが、最後の半年くらいは自分がどんな株を持っていたのか分からなかったと思います。
高齢になったときに別の国に自分の資産がある場合はその資産の管理、移動、処分などほぼ自分で行うのは不可能になっているという事実を忘れてはいけません。
高齢になればなるほど、自分の傍に資産を置いておいて、ボケる前にその処分を決めてしまっておくのが良いのでしょう。
つまり米国籍でアメリカにずっといる人はアメリカに資産を。永住権でそろそろ日本に帰るという人は、日本に早く資産を移すのがいままでの例を見た限りベストプラクティスだと思います。
8、米国人と結婚された方
アメリカで生活されている場合に子供はアメリカの生活になれて、どんどん親を離れていきます。またアメリカ人の男性と結婚された日本人の女性は平均寿命から考えても、旦那様が先立たれて、一人残される可能性が高いのです。アメリカで育った子供は親の面倒を見ることに関して、日本の常識はありません(常識という言葉は良くありませんが、平均的に親の面倒を見る義務という意識の程度は低いのは確かでしょう。)
子供もアメリカスタイルで自分から遠く離れてしまい、旦那さんはこの世にいなくなる。アメリカにたった一人残される可能性が高いわけです。そんなときに兄弟が日本にいても、その兄弟も亡くなれば、たったひとりです。そんな一人の方を多く見てきました。
CDHでは米国永住者や日系人一世の方の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。なぜなら永住権者・日系人一世は、日米の経済そして、国際交流を支えるまさに「縁の下の力持ち」だからです。また永住権者が抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。
この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションをおこされる場合は、必ず税務・法務などの専門家と個別の相談をしてから行ってください。
永住権者あるいは新一世として税金に関してご質問がある方は初回無料でご相談にのります。お気軽に藤本光までご連絡くださいませ。kfujimoto@cdhcpa.com (630) 253-0215
すべてのご質問にお答えするように最大限の努力を払っております。
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