クライブ・ハ ミル トン著「Silent invasion 目にみえぬ侵略」
書評 増田幸央氏(元三菱商事代表取締役、他多数社代表・役員を兼務された)
『中国共産党の巧みな戦略によリ、オーストラリアという国が中国に完全に篭絡されてしまった経緯、原因と結果を詳細に分析、解説しています。よくもここまで豪は中国のいいなりになってしまったのかと驚かされます。
監訳者の山岡鉄秀氏は巻末に「この本が豪を変え、米国にも大きな影響力を与えた」と書いていますが、最近の米・豪の対中政策の急変化を見ると納得のコメントです。
ハミルトンは「日本語版への前書き」の中で
・北京は日本を支配するためには日米同盟を弱体化させねばならないとあらゆる手段を使つている。
・北京の手法は「エコノミック・ ブラックメイル (経済的脅迫)」を使い、中国と他国の経済依存状態を使って、政治面の譲歩を迫るやり方。
日本には北京の機嫌を損なわないようにすることが唯―の目的となった財界の強力な権益が存在する。
。中国は中国人観光客や海外の大学に留学している中国人学生を通じた人的交流さえも「武器」として使っており、中国に依存した旅行会社や大学を自分たちのために働くロビー団体としている。
°フアーウエイに代表される5G等の技術を使って他国の通信 (更 に交通、電気、銀行) ネ ツトワークをコントロールする術を持った。その国と武力紛争ということになれば 習近平の「軍民融合」政策の下、これら民間企業システムが人民解放軍の構想に組み入れられることになる。
。日本には数千人にのぼる中国共産党のエージェントが活動している。彼らはスパイ活 動や影響工作、そして中国共産党統一戦線活動に従事している。人民解放軍の外国語学校の卒業生が長年にわたり日本で貿易会社を隠れ蓑として運営しているケースがある。
彼らは影響力のあるビジネスマンや、保守系政治家とのコネずくりを進めており、ビジネスマン、芸術家、ジャーナリスト、役人を中国を訪問させて「中国の友」となるように育てている。結果彼らは「親中」を主張し始めている。
。中国国民の間に反日愛国感情を扇動することで、共産党一党独裁の正統性を保持している。
又中国共産党は西洋の社会正義に対する真摯な意識を利用して、中国人に対して行われた日本人の歴史的な蛮行に対する同情を獲得し、日本の外交努力を阻害した。西側の多くの政治家や善意の白人活動家は、ミスミスこの罠にかかってしまった。自分 たちは自国で中国系市民と連帯感を示す活動 をしていると信じこんでしまっている。
。我々は非常に大きな力を持って、世界の覇権国になろうと決意した専制国家に直面している。あなたにアメリカが世界で果たしている役割について何らかの批判があるとしても、習近平率いる中国は、自由を信奉する人にとって、はるかに悪い選択となるはずだ。
1.豪の失敗の経験に基ずいて、極めて直載に日本に警告しています。 2015-2018在 任のターンブル首相とその後任で現職のモリソン首相達によって徐々に豪の対中政策の独 自路線化が強化 されてきた。(事 実、今年 4月 豪 が新型 コロナの発生源国際調査の必要性を主張すると、早速北京は豪からの大麦輸入に80% 関税を課す制裁を発動。それにもめげず、今月、今まで中立を保っていた南シナ海問題について国際法違反の立場を明確にした。豪は今のところ踏ん張っている。) しかし、それまでの 30数年間は全く様相を異にしていた。
豪は全て中国の言いなりとなっていた。
著者は
(1) 何故豪は中国を苛立たせることに怯えているのだろうか ?
(2) 何故豪は段々と好戦的になる中国が、自分たちに影響力を及ぼすのを許してしまったのか ? と言う命題を掲げ、その解を見つけるべく徹底した調査研究分析を行った結果をこの本にまとめた訳です。
著者はその解として
「 1980年 代から我々は経済を最優先事項としてしまい経済に全て犠牲を捧げなければならないと考える人々に力を持たせてしまった。 この犠牲の中には自由な国 としての国家の主権も含まれている。」として、一言で言えば「豪は金に目が眩んでしまった」と結論ずけています。
更に「中国の台頭は誰にも止めることは出来ないし、我々の経済の運命は北京の手に握られており、中国の規模を考えれば彼らがアジアを支配すべき」
「この流れに乗ることが最良の選択だ。他に選択肢はない。
それはそれほど悪いことではないかもしれないからだ」という考えが浸透してしまった。 「我々は「友好と協力を追求し、資金を受け入れ、我々の資産を売り、中国の外交官が叫べば飛び上がり、我々のテクノロジー流出に目を背け、我々の政治システムの中に北京の工作員を入れ、中国の人権侵害について声を上げず、我々の大学での自治とオープンな研究のような基本的価値感も犠牲にしてしまった」、国を犠牲にしてしましまった」と補足しています。
2、 豪の対中政策の経緯、中国の対豪投資の実態
(1) 1987年 ホーク首相時代;、
経済最優先政策を推進するため外務省 と貿易 省を合体 させて外務貿易省を創設。爾来「異なる政治体制や価値観」を尊重して中国とのパートナーシップをあらゆるレベルにおいて深め、広げる政策 を取り続けた。
(2) 1989年 天安門事件を見たホーク首相;
当時在豪中の42,000人の中国人留学生に同情し、母国に強制送還はしないとして永住権を与えた。しかし留学生の全てが民主化の運動家ではなく、3分の 2は経済移民になろうとしていた語学留学性であった。更にその後も中国人留学生を積極的に受け入れる政策をとった。結果としてそれら留学生が北京の指導、教育,指示の下 親中、反豪になっていったのは皮肉なことだ。
(3) 2015年 アボット首相時代;
「豪中貿易協定」が締結され中国人も豪人と同条件で豪内で投資が出来ることになり、更なる中国の進出が加速 された。
(4) 2016年 豪国立大学の経済研究所東アジア局と
中国のシンクタンク「中国国際経済交流センター」間で「変化の為のパートナーシップ」と称する共同研究が実施された。その成果はこの研究の主導者ドライスデール教授の名前をとって「ドライスデール報告」として発表。
「豪 と中国の将来の経済関係は中国の経済面の成功にかかっている。中国からの投資に制限を設けるベきではない」と主張。
(5) 2017年 中国が組織した
「豪中 Belt & Road lnisiative」の委員として多くの豪政財界人が就任し、豪北部開発計画への中国参入が積極的に進められた。 (豪の一帯一路検討案件は900件 )、
(6) 2014年 招商局集団
世界最大の石炭積出港ニューキヤッスル港買収 。2015年 嵐橋集団がダーウイン港の 99年間租借契約締結;(対中融和策をとっていた米オバマ政権でさえ豪にクレイムしたことを思い出します。) 。
2016年 グローバル・ コンソーシアムがメルボルン港を買収。そのコンソ ―シアムの20%は 中国投資有限公司 (スリランカのバンバルト港を債務不履行により取得したという有名事件の当事会社) ※中国は既に海外の60港の権益を所有。
国家電網公司と香港の長江基建集団 (李嘉誠の会社)のJVが ビクトリア州の5つの電力供給会社と南オーストラリア唯一の送電会社を買収
・香港の中電集団 (北京と関係が深い)が西オーストラリアで 300万の顧客を持つエナジーオーストラリア社を買収
・長江基建が西豪のガスパイプラインとビクトリア州の電力供給網を保有するデュエット社を買収 。
「エネルギーネットワークスオース トラリア という電力・ガス企業の利益団体 (日本の電事連ガス協会のような組織)の理事の半分は国家電網公司 と長江基建集団出身者
・数限りない都市の不動産と農地が中国企業の所有。
バージンオーストラリア航空の20%は海南島の HNA航空が保有。HNAは豪 内にパイロット訓練校 を開校。 リゾー ト、ホテルも所有。
3、 諜報関係;。
2009年、当時の国防相 ギボンは中国の軍諜報組織に近い中国実業家劉海燕との親密な関係が問題視された事件発生。中国の豪におけるスパイ活動について保安情報機構 (ASIO)も警告を発していなかった。政府首脳が中国のスパイ活動について恐る恐る語れるようになったのは 2017年頃から。
。2013年 首都 キャンベラの中国大使館からグリフイン湖を挟んで対岸にASIOの新ビルが建設されたが、そのビルの設計図がサイバー攻撃で盗まれるという事件が発生。通信 システムを再配置するまで入居不可能になった。しかもその新ビルから 80メートル離れたところに人民解放軍と関係のある中国人億万長者梁光偉の会社深圳1華強?集団の所有するビルがあることが判明。
。2016年 インフラ相ポール・ フレッチャーは中国訪問時にファーウエイからもらったスマートウオッチをつけて国会議事堂内を歩き回ったことが判明。そのスマー卜・ウオッチが議事堂ビルの通信ネット・ワークに繋がっているのではないかと調査されるという事件が発生。ファーウエイの豪理事会のメンバーはダウナー元中国大使、ジョンロード元海軍中将が就任していた。
。豪には 1, 000人 以上の中国秘密工作員が活動していると思われる。(米には 25,000人 の諜報員、15, 000人 の情報提供者が存在) 。
4、 豪の政、官、学、財リーダーの発言の数々 :
<ヒューホワイト>戦略分析の専門家 。
豪の豊かさは中国の恩恵、豪の将来の繁栄も中国に依存 。豪は米同盟から抜けるべき、中国に降伏するしかない、米中の争いは中が勝つ。中国に対してチベット弾圧、信教の自由などを説教しても無駄、権利、自由等は世界の歴史の大戦略の中では些細なこと。
中と豪の価値観はそれほど違わない :
<ジェフ・ラビン>元中国大使 。中国は今さら抵抗するには大きな存在であり、我々は何も変える事は出来ない。中国に対して価値や人権に集中した姿勢をとるのではなく、経済的つなが りを強化する実用的アプローチをとるべき:
<メリデン・バーラン>シンクタンク、ロウウイ研究所博士 。中国人は高い生活水準と引き換えに政治には関わらないという「社会契約」を結んでいる :
<ボブ・ホーク>元首相、中国企業へのビジネス紹介業;中国が 2,500年続 けてきた支配的地位を維持するのは当然 :
<ポール・キーティング>元首相、中国開発銀行の国際諮問委員会委員長 。
中国のことは良く理解出来ている。米の覇権国としての地位は終わった、中国の台頭には正当性がある:
<ジェフ・ラビン>元中国大使、ボアオ、フォーラム創設者の一人 。中国に深い戦略や戦略目標はない、国家を成長させるだけ、共産党の生き残りを確保することのみが目標 。豪の米との同盟は破棄すべき 。中国の侵略に豪は十分抵抗出来ない。南シナ海は解決済、人工島の軍事施設を作っても何もしない、航行の自由を求めているのは中国だ
<カラム・スミス>:豪国立大卒、湖南省社会科学院国際関係研究所研究員 。
中国人ビジネスマンが豪政党に献金することは中国では当たり前の慣習 :
<スティーブン・フィッツジェラルド>元中国大使
・米との関係解消、中国との一体化 :
<ジョン・ハウワード>元首相 。中国経済界が共産党と密接な関係にあるのは承知しているが恐れる必要はない
5、 中国の侵略の手法
ハミルトンは調査、研究を進めていく内に中国の侵略手法が極めて効果的であることが分かったと述懐しています。
監訳者の山岡鉄秀氏は巻末に「この本が豪を変え、米国にも大きな影響力を与えた」と書いていますが、最近の米・豪の対中政策の急変化を見ると納得のコメントです。
ハミルトンは「日本語版への前書き」の中で
・北京は日本を支配するためには日米同盟を弱体化させねばならないとあらゆる手段を使つている。
・北京の手法は「エコノミック・ ブラックメイル (経済的脅迫)」を使い、中国と他国の経済依存状態を使って、政治面の譲歩を迫るやり方。
日本には北京の機嫌を損なわないようにすることが唯―の目的となった財界の強力な権益が存在する。
。中国は中国人観光客や海外の大学に留学している中国人学生を通じた人的交流さえも「武器」として使っており、中国に依存した旅行会社や大学を自分たちのために働くロビー団体としている。
°フアーウエイに代表される5G等の技術を使って他国の通信 (更 に交通、電気、銀行) ネ ツトワークをコントロールする術を持った。その国と武力紛争ということになれば 習近平の「軍民融合」政策の下、これら民間企業システムが人民解放軍の構想に組み入れられることになる。
。日本には数千人にのぼる中国共産党のエージェントが活動している。彼らはスパイ活 動や影響工作、そして中国共産党統一戦線活動に従事している。人民解放軍の外国語学校の卒業生が長年にわたり日本で貿易会社を隠れ蓑として運営しているケースがある。
彼らは影響力のあるビジネスマンや、保守系政治家とのコネずくりを進めており、ビジネスマン、芸術家、ジャーナリスト、役人を中国を訪問させて「中国の友」となるように育てている。結果彼らは「親中」を主張し始めている。
。中国国民の間に反日愛国感情を扇動することで、共産党一党独裁の正統性を保持している。
又中国共産党は西洋の社会正義に対する真摯な意識を利用して、中国人に対して行われた日本人の歴史的な蛮行に対する同情を獲得し、日本の外交努力を阻害した。西側の多くの政治家や善意の白人活動家は、ミスミスこの罠にかかってしまった。自分 たちは自国で中国系市民と連帯感を示す活動 をしていると信じこんでしまっている。
。我々は非常に大きな力を持って、世界の覇権国になろうと決意した専制国家に直面している。あなたにアメリカが世界で果たしている役割について何らかの批判があるとしても、習近平率いる中国は、自由を信奉する人にとって、はるかに悪い選択となるはずだ。
1.豪の失敗の経験に基ずいて、極めて直載に日本に警告しています。 2015-2018在 任のターンブル首相とその後任で現職のモリソン首相達によって徐々に豪の対中政策の独 自路線化が強化 されてきた。(事 実、今年 4月 豪 が新型 コロナの発生源国際調査の必要性を主張すると、早速北京は豪からの大麦輸入に80% 関税を課す制裁を発動。それにもめげず、今月、今まで中立を保っていた南シナ海問題について国際法違反の立場を明確にした。豪は今のところ踏ん張っている。) しかし、それまでの 30数年間は全く様相を異にしていた。
豪は全て中国の言いなりとなっていた。
著者は
(1) 何故豪は中国を苛立たせることに怯えているのだろうか ?
(2) 何故豪は段々と好戦的になる中国が、自分たちに影響力を及ぼすのを許してしまったのか ? と言う命題を掲げ、その解を見つけるべく徹底した調査研究分析を行った結果をこの本にまとめた訳です。
著者はその解として
「 1980年 代から我々は経済を最優先事項としてしまい経済に全て犠牲を捧げなければならないと考える人々に力を持たせてしまった。 この犠牲の中には自由な国 としての国家の主権も含まれている。」として、一言で言えば「豪は金に目が眩んでしまった」と結論ずけています。
更に「中国の台頭は誰にも止めることは出来ないし、我々の経済の運命は北京の手に握られており、中国の規模を考えれば彼らがアジアを支配すべき」
「この流れに乗ることが最良の選択だ。他に選択肢はない。
それはそれほど悪いことではないかもしれないからだ」という考えが浸透してしまった。 「我々は「友好と協力を追求し、資金を受け入れ、我々の資産を売り、中国の外交官が叫べば飛び上がり、我々のテクノロジー流出に目を背け、我々の政治システムの中に北京の工作員を入れ、中国の人権侵害について声を上げず、我々の大学での自治とオープンな研究のような基本的価値感も犠牲にしてしまった」、国を犠牲にしてしましまった」と補足しています。
2、 豪の対中政策の経緯、中国の対豪投資の実態
(1) 1987年 ホーク首相時代;、
経済最優先政策を推進するため外務省 と貿易 省を合体 させて外務貿易省を創設。爾来「異なる政治体制や価値観」を尊重して中国とのパートナーシップをあらゆるレベルにおいて深め、広げる政策 を取り続けた。
(2) 1989年 天安門事件を見たホーク首相;
当時在豪中の42,000人の中国人留学生に同情し、母国に強制送還はしないとして永住権を与えた。しかし留学生の全てが民主化の運動家ではなく、3分の 2は経済移民になろうとしていた語学留学性であった。更にその後も中国人留学生を積極的に受け入れる政策をとった。結果としてそれら留学生が北京の指導、教育,指示の下 親中、反豪になっていったのは皮肉なことだ。
(3) 2015年 アボット首相時代;
「豪中貿易協定」が締結され中国人も豪人と同条件で豪内で投資が出来ることになり、更なる中国の進出が加速 された。
(4) 2016年 豪国立大学の経済研究所東アジア局と
中国のシンクタンク「中国国際経済交流センター」間で「変化の為のパートナーシップ」と称する共同研究が実施された。その成果はこの研究の主導者ドライスデール教授の名前をとって「ドライスデール報告」として発表。
「豪 と中国の将来の経済関係は中国の経済面の成功にかかっている。中国からの投資に制限を設けるベきではない」と主張。
(5) 2017年 中国が組織した
「豪中 Belt & Road lnisiative」の委員として多くの豪政財界人が就任し、豪北部開発計画への中国参入が積極的に進められた。 (豪の一帯一路検討案件は900件 )、
(6) 2014年 招商局集団
世界最大の石炭積出港ニューキヤッスル港買収 。2015年 嵐橋集団がダーウイン港の 99年間租借契約締結;(対中融和策をとっていた米オバマ政権でさえ豪にクレイムしたことを思い出します。) 。
2016年 グローバル・ コンソーシアムがメルボルン港を買収。そのコンソ ―シアムの20%は 中国投資有限公司 (スリランカのバンバルト港を債務不履行により取得したという有名事件の当事会社) ※中国は既に海外の60港の権益を所有。
国家電網公司と香港の長江基建集団 (李嘉誠の会社)のJVが ビクトリア州の5つの電力供給会社と南オーストラリア唯一の送電会社を買収
・香港の中電集団 (北京と関係が深い)が西オーストラリアで 300万の顧客を持つエナジーオーストラリア社を買収
・長江基建が西豪のガスパイプラインとビクトリア州の電力供給網を保有するデュエット社を買収 。
「エネルギーネットワークスオース トラリア という電力・ガス企業の利益団体 (日本の電事連ガス協会のような組織)の理事の半分は国家電網公司 と長江基建集団出身者
・数限りない都市の不動産と農地が中国企業の所有。
バージンオーストラリア航空の20%は海南島の HNA航空が保有。HNAは豪 内にパイロット訓練校 を開校。 リゾー ト、ホテルも所有。
3、 諜報関係;。
2009年、当時の国防相 ギボンは中国の軍諜報組織に近い中国実業家劉海燕との親密な関係が問題視された事件発生。中国の豪におけるスパイ活動について保安情報機構 (ASIO)も警告を発していなかった。政府首脳が中国のスパイ活動について恐る恐る語れるようになったのは 2017年頃から。
。2013年 首都 キャンベラの中国大使館からグリフイン湖を挟んで対岸にASIOの新ビルが建設されたが、そのビルの設計図がサイバー攻撃で盗まれるという事件が発生。通信 システムを再配置するまで入居不可能になった。しかもその新ビルから 80メートル離れたところに人民解放軍と関係のある中国人億万長者梁光偉の会社深圳1華強?集団の所有するビルがあることが判明。
。2016年 インフラ相ポール・ フレッチャーは中国訪問時にファーウエイからもらったスマートウオッチをつけて国会議事堂内を歩き回ったことが判明。そのスマー卜・ウオッチが議事堂ビルの通信ネット・ワークに繋がっているのではないかと調査されるという事件が発生。ファーウエイの豪理事会のメンバーはダウナー元中国大使、ジョンロード元海軍中将が就任していた。
。豪には 1, 000人 以上の中国秘密工作員が活動していると思われる。(米には 25,000人 の諜報員、15, 000人 の情報提供者が存在) 。
4、 豪の政、官、学、財リーダーの発言の数々 :
<ヒューホワイト>戦略分析の専門家 。
豪の豊かさは中国の恩恵、豪の将来の繁栄も中国に依存 。豪は米同盟から抜けるべき、中国に降伏するしかない、米中の争いは中が勝つ。中国に対してチベット弾圧、信教の自由などを説教しても無駄、権利、自由等は世界の歴史の大戦略の中では些細なこと。
中と豪の価値観はそれほど違わない :
<ジェフ・ラビン>元中国大使 。中国は今さら抵抗するには大きな存在であり、我々は何も変える事は出来ない。中国に対して価値や人権に集中した姿勢をとるのではなく、経済的つなが りを強化する実用的アプローチをとるべき:
<メリデン・バーラン>シンクタンク、ロウウイ研究所博士 。中国人は高い生活水準と引き換えに政治には関わらないという「社会契約」を結んでいる :
<ボブ・ホーク>元首相、中国企業へのビジネス紹介業;中国が 2,500年続 けてきた支配的地位を維持するのは当然 :
<ポール・キーティング>元首相、中国開発銀行の国際諮問委員会委員長 。
中国のことは良く理解出来ている。米の覇権国としての地位は終わった、中国の台頭には正当性がある:
<ジェフ・ラビン>元中国大使、ボアオ、フォーラム創設者の一人 。中国に深い戦略や戦略目標はない、国家を成長させるだけ、共産党の生き残りを確保することのみが目標 。豪の米との同盟は破棄すべき 。中国の侵略に豪は十分抵抗出来ない。南シナ海は解決済、人工島の軍事施設を作っても何もしない、航行の自由を求めているのは中国だ
<カラム・スミス>:豪国立大卒、湖南省社会科学院国際関係研究所研究員 。
中国人ビジネスマンが豪政党に献金することは中国では当たり前の慣習 :
<スティーブン・フィッツジェラルド>元中国大使
・米との関係解消、中国との一体化 :
<ジョン・ハウワード>元首相 。中国経済界が共産党と密接な関係にあるのは承知しているが恐れる必要はない
5、 中国の侵略の手法
ハミルトンは調査、研究を進めていく内に中国の侵略手法が極めて効果的であることが分かったと述懐しています。
・北京の批判者を沈黙させたり 。在豪中国人を懐柔したり、脅かしたり 。豪のエリート、オピニオン・ リーダーを親中にしたり
・豪の大学の学者の間に自己検閲が起こるようにしたり その具体的手法は 。豪内外の中国系富豪からの政党、議員、学者、大学への献金
・豪 リーダーたちの中国系企業役員への登用。あご,あし付きの中国への旅行
・数多くの豪中友好のための組織の創設 。豪、中大学問の共同研究 プログラムの創設 。中国大使館、領事館 による在豪中国人に対する教宣事業推進 ,孔子学院の活用 等々。そしてそれら手法を現実化する根源には北京の明白な長期戦略があると断じています。
即ち
(1)「 国家情報法」「国防動員法」で中国国内のみならず海外在住の中国人全てに対 し、中國の安全保障の為の情報提供を求め、また一旦事あらば全ての中国人が中国国家防衛のために働くことを義務ずける法的措置を取っている。
(2) 中国の対外工作を主導する組織 は「統一戦線工作部」でその傘下に「国務院僑務 弁公室」を置き、海外に散 らばった中国人を北京の目的のために動員して、国際的な世論を支配する
・西洋の価値観を「中国の価値体系」に取り換える工作に従事させる試みを進めている。
(3) 1991年江沢民は「偉大な中国の復興」というスローガンを掲げ、愛国教育を強化し、中国社会の安定・成長のためには共産党による厳しい統制と国民の愛国ナショナリズムが必須として共産党一党独裁を正当化した。
(4) 2004年胡錦涛は豪の開放性、多文化主義、少ない人口、多くの中国系移民の存在に目をつけ、豪を西欧社会を分断する格好の国と考え、豪を「中国の周辺地域」に組み込む活動を活発化させた。
(5) 2010年 人民解放軍元大佐;
軍事研究家の劉冥福は「中国の夢 :米後の世界大 国の思考 と戦略的態勢」という論文を発表し、自由を越 えた価値観、法を越えた倫理観、民主制度や人権を越 えた共産党エリートによる中国統治の正統性を主張。
(6) 2015年習近平は
劉冥福の「中国の夢」を自身のスローガンとしてナショナリズム高揚路線を強化。また「高等教育ガイドライン」で学校、大学を党の「思想工作」における最 大の発信場所と規定。海外で学ぶ中国人学生を共産党の中央統一戦線工作における新たな中心的存在 と位置ずけた。即ち海外に学ぶ学生は同僚学生、教授の活動を監視し北京の方針に基ずく活動 をしているか「告発して報告する」ことが求められた。この活動 には世界に500校展開している孔子学院 (豪に14校、日本に18校)と現地大使館、領事館が最大限活用された。 2016年には党や政府の意思決定 に資する研究活動を行う組織としてまた共産党の将来の リーダーをリクルートする場所 として「シンクタンク」強化の方針を出 した。
6、 ハミルトンの提言
(1)豪の経済も多角化 して、中国依存度を減らす
(2)日 本、インドとの関係強化
(3)日 、印、韓、インドネシア、ニュージーランドと「アジア民主国家同盟」の創設
(4) 日、米、豪、印戦略対話」という非公式安全保障パートナーシップの創設
7、総括
あらためて中国共産党政権の長期的戦略に基ずく覇権行動の巧みさ、優秀さに驚かされます。 一方で歴代首相、歴代中国大使の全員が親中、媚中派になってしまったという豪の事実、鳩山由紀夫や丹羽宇一郎といった人間を何十人とつくってしまった豪という国はどういう国なんだという疑間には未だ回答を得ていません。
(日本は豪ほど浸食されていないと言う私の自信のない前提の下で) 大きな国土と豊富な資源 を持ち、人口少なく、フロンティア精神の残る社会で、しかも世界の中枢から離れた地域に存在する国に於いては金が儲かるという認識だけで この様 に堕落してしまうものでしょうか ?
英連邦の宗主国英国に於いてキャメロン首相、オズボーン財相は2015年、中国を最良のパートナーとして中国マネーを呼び込み、景気回復の起爆剤 にする政策をとったことを思い出します。その英国がジョンソン首相の下、一旦決めたファーウエイの導入を2027年までに排除することを決定したようです。その決定に対し7月26日経新聞 Global Eyeに FTの ライオネル・バーバー前編集長が批判記事を書いています。
「ジョンソン政権は当面世論の流れに沿って進む以外に道はなさそうだが、中国との正面衝突は回避すべきだ。まともにやりあっても勝ち目は無く、出来るだけ痛手を被らないようにするのが最善の選択だろう。英国の大学にとって中国人留学生からの学費は貴重な収入源だろう。金融センターを巡ってはロンドンの金融シテイがオフショア人民元取引やグリーンファイナンス等を通じ、上海証券取引所 との結びつきを強めたいと願っている。だが現状ではいずれも報復合戦によって関係が失われてしまうかもしれない」と。 豪の「China Club」の連中と同じような事を言っています。「武力的、覇権的行動は英国迄及ばないだろうから経済優先で両国関係 を考えて行こうということか ?
自由、人権、法治 という価値観を共有する民主主義体制が中国の全体主義に圧倒されてしまったら、いずれ英国は苦境に立たされるという事を考えないのか。 「この馬鹿、ハミルトンの「Silent invasion」を読んだのか」と怒鳴りつけたい気持ちです。
日本はこの豪の事例を他山の石としてとらえ、中国の属国になることを避ける (子供や孫が中国の奴隷とならないように)為 、全力を挙げて対中国安全保障策をとるべきと痛感しています。日本は大丈夫でしょうか ? そしてこの本を日本の政,官,学,財のリーダーだけでなく国民全てが読むべきと思いました。 2020年 7月28日 増 田幸央
・豪の大学の学者の間に自己検閲が起こるようにしたり その具体的手法は 。豪内外の中国系富豪からの政党、議員、学者、大学への献金
・豪 リーダーたちの中国系企業役員への登用。あご,あし付きの中国への旅行
・数多くの豪中友好のための組織の創設 。豪、中大学問の共同研究 プログラムの創設 。中国大使館、領事館 による在豪中国人に対する教宣事業推進 ,孔子学院の活用 等々。そしてそれら手法を現実化する根源には北京の明白な長期戦略があると断じています。
即ち
(1)「 国家情報法」「国防動員法」で中国国内のみならず海外在住の中国人全てに対 し、中國の安全保障の為の情報提供を求め、また一旦事あらば全ての中国人が中国国家防衛のために働くことを義務ずける法的措置を取っている。
(2) 中国の対外工作を主導する組織 は「統一戦線工作部」でその傘下に「国務院僑務 弁公室」を置き、海外に散 らばった中国人を北京の目的のために動員して、国際的な世論を支配する
・西洋の価値観を「中国の価値体系」に取り換える工作に従事させる試みを進めている。
(3) 1991年江沢民は「偉大な中国の復興」というスローガンを掲げ、愛国教育を強化し、中国社会の安定・成長のためには共産党による厳しい統制と国民の愛国ナショナリズムが必須として共産党一党独裁を正当化した。
(4) 2004年胡錦涛は豪の開放性、多文化主義、少ない人口、多くの中国系移民の存在に目をつけ、豪を西欧社会を分断する格好の国と考え、豪を「中国の周辺地域」に組み込む活動を活発化させた。
(5) 2010年 人民解放軍元大佐;
軍事研究家の劉冥福は「中国の夢 :米後の世界大 国の思考 と戦略的態勢」という論文を発表し、自由を越 えた価値観、法を越えた倫理観、民主制度や人権を越 えた共産党エリートによる中国統治の正統性を主張。
(6) 2015年習近平は
劉冥福の「中国の夢」を自身のスローガンとしてナショナリズム高揚路線を強化。また「高等教育ガイドライン」で学校、大学を党の「思想工作」における最 大の発信場所と規定。海外で学ぶ中国人学生を共産党の中央統一戦線工作における新たな中心的存在 と位置ずけた。即ち海外に学ぶ学生は同僚学生、教授の活動を監視し北京の方針に基ずく活動 をしているか「告発して報告する」ことが求められた。この活動 には世界に500校展開している孔子学院 (豪に14校、日本に18校)と現地大使館、領事館が最大限活用された。 2016年には党や政府の意思決定 に資する研究活動を行う組織としてまた共産党の将来の リーダーをリクルートする場所 として「シンクタンク」強化の方針を出 した。
6、 ハミルトンの提言
(1)豪の経済も多角化 して、中国依存度を減らす
(2)日 本、インドとの関係強化
(3)日 、印、韓、インドネシア、ニュージーランドと「アジア民主国家同盟」の創設
(4) 日、米、豪、印戦略対話」という非公式安全保障パートナーシップの創設
7、総括
あらためて中国共産党政権の長期的戦略に基ずく覇権行動の巧みさ、優秀さに驚かされます。 一方で歴代首相、歴代中国大使の全員が親中、媚中派になってしまったという豪の事実、鳩山由紀夫や丹羽宇一郎といった人間を何十人とつくってしまった豪という国はどういう国なんだという疑間には未だ回答を得ていません。
(日本は豪ほど浸食されていないと言う私の自信のない前提の下で) 大きな国土と豊富な資源 を持ち、人口少なく、フロンティア精神の残る社会で、しかも世界の中枢から離れた地域に存在する国に於いては金が儲かるという認識だけで この様 に堕落してしまうものでしょうか ?
英連邦の宗主国英国に於いてキャメロン首相、オズボーン財相は2015年、中国を最良のパートナーとして中国マネーを呼び込み、景気回復の起爆剤 にする政策をとったことを思い出します。その英国がジョンソン首相の下、一旦決めたファーウエイの導入を2027年までに排除することを決定したようです。その決定に対し7月26日経新聞 Global Eyeに FTの ライオネル・バーバー前編集長が批判記事を書いています。
「ジョンソン政権は当面世論の流れに沿って進む以外に道はなさそうだが、中国との正面衝突は回避すべきだ。まともにやりあっても勝ち目は無く、出来るだけ痛手を被らないようにするのが最善の選択だろう。英国の大学にとって中国人留学生からの学費は貴重な収入源だろう。金融センターを巡ってはロンドンの金融シテイがオフショア人民元取引やグリーンファイナンス等を通じ、上海証券取引所 との結びつきを強めたいと願っている。だが現状ではいずれも報復合戦によって関係が失われてしまうかもしれない」と。 豪の「China Club」の連中と同じような事を言っています。「武力的、覇権的行動は英国迄及ばないだろうから経済優先で両国関係 を考えて行こうということか ?
自由、人権、法治 という価値観を共有する民主主義体制が中国の全体主義に圧倒されてしまったら、いずれ英国は苦境に立たされるという事を考えないのか。 「この馬鹿、ハミルトンの「Silent invasion」を読んだのか」と怒鳴りつけたい気持ちです。
日本はこの豪の事例を他山の石としてとらえ、中国の属国になることを避ける (子供や孫が中国の奴隷とならないように)為 、全力を挙げて対中国安全保障策をとるべきと痛感しています。日本は大丈夫でしょうか ? そしてこの本を日本の政,官,学,財のリーダーだけでなく国民全てが読むべきと思いました。 2020年 7月28日 増 田幸央
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