米国の大手出版社が、歴史教科書に出てくる慰安婦の記述を修正するよう求めた日本政府の要請を拒否した
 マグロウヒル・エデュケーション(本社・ニューヨーク)は15日、日本政府の関係者が「Traditions & Encounters: A Global Perspective on the Past(伝統と交流:過去に対する世界的視座)」に書かれた「慰安婦」に関する記述を変更するよう求めてきたことを文書で公表。「『慰安婦』の歴史的事実に対する学者の意見は一致している。われわれは執筆者たちの記述、研究、表現を明確に支持する」と述べた。
 安倍晋三首相が率いる保守政権は、戦時の行動に関する否定的な記述をトーンダウンさせることで海外における日本のイメージを改善させ、日本人の愛国心を取り戻そうとしている。今回の修正要求もその一環で、日本と韓国が関係改善のきっかけを探っているタイミングで表沙汰になった。

 外務省は、教科書の記述修正を求めるため、昨年12月半ばに米国の総領事館を通じてマグロウヒルと接触したことを認めた。歴史教科書に「重大な事実誤認や日本政府の立場と相いれない記述がある」と述べたが、具体的な箇所は引用していない。

 この教科書は歴史家のジェリー・ベントレー氏とハーバート・ジーグラー氏が執筆した。慰安婦については2段落が割かれ、「日本軍は14〜20歳の20万人もの女性を強制的に募集、徴用し、『慰安所』と呼ばれた軍の売春宿で働くことを強制した」と書かれているほか、日本軍が「その行動を隠すため大量の慰安婦を虐殺した」とも記されている。
 ハワイ大学マノア校の准教授を務めるジーグラー氏は電子メールで、同氏が慰安婦の部分を執筆したことを明かしたうえで、こう述べた。「出版社と私は日本政府の関係者から個別に連絡を受け、不愉快な書き方に何らかの修正を求められた。出版社も私もそのような考えは一切受け入れていない」