2016年12月9日金曜日

16034 「サピエンス」人類史から未来が見える(1)


16034

「サピエンス」人類の歴史から未来が見える(1)

日本はうそは正しくないから詐欺の例をおしえない。そして1生働いてためた年金を、ごっそり詐欺に盗られて泣く。その位なら、詐欺をする判例から、詐欺師はどうだましているかを教えれば、詐欺師になる人もいるかもしれないが、殆どはサギはどういう犯罪かがわかり、だまされなくなる。私はそう考えている。この本は結論として、教えたほうが本人のためになると考えている。

予断を述べたが、大変な歴史学者がいたものだ。イスラエル出身、英国で中世史・軍事史をオクスフォードで学び、戻って人類史を教える40歳。日本の歴史家とはかなり違った博学さにおどろかされるが、人類がホモ・サピエンスに分科してゆく過程が分かりやすい。

実はこの本の前に「歴史はベキ乗則で動く」(マーク・ブキャナン/水谷淳訳)を読んでいたので、「歴史」「文化」の意味が広がり、数学と生物学など科学とで考える見方がひじょうに面白いと感じたのだ。つまりは、(文化・宗教・政治などがすべて科学とは呼べない”虚構”つまりは創造から始まっていると位置づけている。)

人類史を現代イスラエル人の目で見ている
 
250万年くらい前から今の人類がはじまり、7万年まえから、ホモ・サピエンスに分科した。交尾により繁殖力のある子孫をのこせるものが、同類の種といわれる。つまり馬とロバは交雑しても子供はラバで、繁殖力が無いから別の種だという。

属が集まると科とよばれ、人類はほかの動物とはちがうことになっていた。だが実際はホモ(人)属のサピエンス(賢いの意味)科で、ホモには、アジア西部のネアンデルタール、アジア東部にはエレクトスなどが200万年間くらい生き延びてきたという。インドネシアのジャワ島にいたホモ・ソロエンシス、近くの小さなフローレス島では、食物が足りず、身長1メートル、25キロくらいに小形化したが、石器を作れた種がいた。2010年という最近になってシベリアでホモ・デニソワ人が見つかった。

サピエンスは40万年くらい前までアフリカにいつづけ、ライオン、ハイエナ、ジャッカルの順でたべ残したものを石器でわり、肉や骨髄を食べる食物連鎖の中位にいた。              1部が群れで狩をおぼえ、上位に跳び出した。そこで頂点にいたライオンなどに狙われるようになり、狙われる恐怖心もホモは学んだに違いない。

30万年まえには主として近いエレクトス、ネアンデルタール、サピエンスは火を使っていた。 火のおかげでチンパンジーが1日5時間も生ものを噛むのに、火による調理で食事時間が1時間ですむようになった。食べられる食物も多様化して、脳が発達し腸も短くなった。

 ところで先祖だと思っていたネアンデルタールは、サピエンスの先祖ではなく同期に近く、サピエンスが繁殖し、数でまさり圧倒したという説と、交雑したので前者のようなたくましい体形をもったという説があった。
最近ネアンデルタールのDNAが多数分析され、中東とヨーロッパのサピエンスのうちでの混合比率は1~4%だったと分かった

またメラネシア、オーストラリア先住民にも、シベリアのデニソワ人のDNAが最多で6%混じっていたのだ。(シベリアからメラネシアへの途中に日本はある)              いずれにせよ、ネアンデルタール、ソロエンシス、デニソワは5万年まえに絶えている。
サピエンスが生き残った成功の秘密はなぜだろうか。   

 集団で多数が行動できるためには、虚構(想像)が要る

結論からいうと、人と他の種との1番の違いは、言葉と集団に群れる数だったという。たとえばチンパンジーは20頭からせいぜい100頭だ。そして人類の社会生活も、縄張りと食べ物をめぐって争いになる。集団がまとまれるのは、そこにリーダーがいても150人の壁があるという。この壁を広げるには、たがいに噂話が伝えられ、宗教的なシンボルなど現実に見えないものや、考えが伝えられる認知能力が必要とされる。 

交易が出来るようになったのも、サピエンスだけが信頼が生み出され、認知革命が生れたという。これにはネアンデルタールも勝ち目はなかったはずだ。
ひじり付きの矢を作っていた時期から、わずか3万年で核弾頭を作るまでになったのは、集団としてのサピエンスの何百万人の見知らぬ者たちの協力と知恵の蓄積があったのだ。

サピエンスは農耕が始まるまえはみな狩猟民族であり、毎日家財道具を背負って移動していた。それは今いる狩猟民族とは違っていた。オーストラリア先住民は30万~70万人が200~600の部族の分かれて英国に征服される直前に住んでいたばかりか、それが更にいくつかの集団に分割されていた。各部族で言語、宗教、規範も別だった。全世界では、500~800万人が何千の部族、言語、文化を持っていたのだ。        (それは同属として生き残るために必要だったということである。 現在で言うなら、自衛のためのパスワード、セキュリティーコードの役目でもあったのだろう。)  

そしてカリスマのあるリーダーのもと、40年ごとに2つに分かれ、食料を求め100キロずつ東に移住すると、アフリカから中国まで1万年で到達できたのだろう。

4万年前だからとバカに出来ないのは、今のように分業化した農業・工業社会よりは、身体能力はいうにおよばず、遥かに知識と技能面での知識がすぐれていたという。他者の技能に頼れると、しだいに「愚か者のニッチに頼る」ようになるのだ。

 いままで、何度もディジタル化によるコミュニケーションの欠如やゲームにはまることの危険性を指摘してきたが、これはサピエンスの生き残りのための本能、生命の叫びだったのかも知れない。
非常に面白い本で訳もよいので、興味あるひとは是非本をお読みになるとよい。  

8~9千年前までサピエンスはみな狩猟民族だった

寒冷化と温暖化のサイクルは10万年毎だった。このサイクルが乱れてはいるが、100万年まえから、10万年の周期で10万年毎の氷河期がきて、その間に隕石の大きな衝突もあり、ことに6万年まえから5回の衝突、ことにひどいものは2.4万年まえのもので、9割り以上の動植物が消滅した。(つまり今いるホモ・サピエンスの私たちは非常にラッキーな人たちだ。自殺などするのは、許されないほど勿体ない存在だと感じるだろう。)
人より大型な動物は4.5万年前の衝突で、オーストラリアからは完全に消えたという。
1万8千年まえから最後の氷河期が終わり、温暖化で雨もふえる。

小麦などは種として育てる知恵などもついてくる。農耕が始まったのは9500~8500年まえからで、今のトルコ南東とイラン西部とレヴァント地方の丘陵である。(いまISISがシリアと戦っている辺りだろう。)農耕革命は中東・中国・中央アメリカではじまり、なんでも栽培できたわけではなく、小麦・稲・ジャガイモなど違ったものからスタートしたようだ。家畜化はヤギや羊から始まったようだ。

農耕民になって定住が始まるが、幸せだったとは限らない。ただ野にあるものをとってくるのと違い、まず定着すると、農機具などの工夫もはじまり 、天候などでの収穫にばらつきが生じる。
人口がふえ政治や宗教などが起こり、収穫は10倍になるが、人口も急増した。 
作物の奪い合いも起き、15~25%の死人が出る争いが始まった。開拓や農作業で椎間板ヘルニアなどもでる。それまでの狩猟での5%くらいの死亡ではおさまらなくなる。

1万年まえころから、牛・ブタ・ヤギ・鶏が家畜化されてきたが、限られた世界で数百万頭だったが、現在はそれぞれが10億頭、トリは250億羽に増え、人口も300~800万人から、2.5億人になった。それで幸せになったわけではなく、子供の数がふえ、3分の1も死亡するから、宗教的な祈りも始まり、集団での協力作業も始まり、リーダーができ、エリート層が形成される。9千年も前にはネアンデルタールの集団を追い散らすくらいにはなっていた。

 

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