2015年11月14日土曜日

15222-(5) コミュニケーションを突き詰めると(5)


コミュニケーションを突き詰めると(5
(コミュニケーションは言葉だがそれだけではない)

相手の抱える問題を理解すると本音の会話が始まる

(1)のプラント事業と話しが前後しますが、その後、米国にきてからもプラントでの経験は役立ちました。人は過去の経験でえた知識をつなぎ合わせて考えようとするから、無駄な経験はないのです。歴史の本を読む意味は、その辺にもあると感じます。
シカゴでは本社の機械部の多くの部局との付き合いが始まり、各業種での常識の雑学がふえます。そのうちに車の変速機、マテハン機械、土木基礎機械などと絞られてきますが、仕事が増えるにつれ自分とアシスタントだけではやり切れません。本社からの増員やメーカーの出向者にも参加いただきました。

ビジネスが安定したらどんどん人に渡してお任せし、結局は1番問題の課題が多くチャレンジの残った建機に集中して、事業部の採算を黒字化するのに大変な苦労を始めました。

なぜ人は本音で本当のことを言わないか
貴方の気分を害することは言いたくないが、本心は時間のムダと感じるから。あるいは、言って得られるものより、失うものの方が多いと考えるからです。
そのまえに、まず見るからに新米で、えびのように後ずさりしながら、言われたことを復唱するだけの新人に、まともに答えてくれる人は少ないのです。
「うちに来る前によそで練習してから来い」と云われも仕方ありません。

コピー機の大手に入社したスーパー営業マンに聞きました。入社したての頃は「この町内のあらゆるビルの、上から順番に、はじからトビコミで売り込んで来い」といわれ、やっているうちに、どんな業種でも物怖じしなくなり、ようやく度胸と経験ができたといいます。米人が見しらずの誰とでも話せるのは、知らない人と話す訓練を子供の頃からやっているからだと思います。それに対し、割りに寛大に対話をしてくれる社会があるのも事実ですが。

 なぜ貴方と話すのは無意味と考えるかについて
すでに述べたことですが、あなたが基礎知識は得て、相手の言葉もほぼ正確に理解し、多少は相手の会社の仕事を理解した人の場合、それでも貴方とは話したくないというケースがある。
1) 危険なアプローチ
これは貴方の考え方が、お客様の会社のため、又は相手個人のためにどう役立つかに徹しきれていない。セールスマンだけの利益になるか、あるいは誰のためにもならないと感じられるからという場合が多いから。自分の経験がゼロで、話すことが少ないと、どうしても次のどれかを使いかねません。

  • 会社は小さいが、元は大きな会社にいたと相手がいう前に言ってしまう。OOさんを知っているというのも同じ。苦しいのはわかりますが。それよりは、正攻法は、その方を知っている人の紹介をうけるのがおすすめです。(虎の衣を借りるきつね)
  • しゃべり方に相手がストレスを感じる脅しが入っている(買わないと貴方の損になりますという押し売り商法)
  • 貴方だけに値段を安くしますという(貧乏人に施すような口調。リースを提案したら、うちの会社の方がお宅より現金保有額は多いよといわれたこともありますが、『そのお金は経費にはなりませんね(節税にならない)』と反論できるようになるまでには時間が掛かりました。(現金保有の多い会社に貸す話は説得性にかける)
  • 実績が殆どないのにあるようにふるまう(大なり小なり、誰でもいう言葉ですが、他人の実績の無断借用)                            米人は誰もが”最初に使ってやった=パイオニアだ”ということには強い関心がありますが、そのリスクを値引き・割引で示せるかと値引きしろと言われます。その値引率は定価の3分の1くらいはないと針が振れません。
親類や知人は顔をしかめて我慢する。お人よしは人情に負けて買ってやることもある。これは本人のためにならないことが多い。                         私も若い頃には失敗して落ち込んだり、うまく結果が出ると驕りの心を持ったり、いろいろ悩んだ時期もあり、松下幸之助さんの本やテープも多数を読み耳をかたむけ聴きました。

これらのプロセスをうまく纏めた、近江商人が跡継ぎを育てるために、昔は厳しいやり方で長男に「鍋ぶた」を売って歩かせる修行をさせた映画があります。
「てんびんの詩(うた)」というのですが、薦めてくれた明治コーポのS社長に感謝して、いま時のインターンのトレーニングに生かしています。

2)タレント的なアプローチ;JR路線に火までつける?
  • 人は誰でも努力するより楽をしたい、
  • 手っ取り早い身近なところから始めて早く結果をだしたい、
  • 成功者の話しを聞いてあやかりたい、
  • 皆にすごいと誉められて好かれたい、スポットライトを浴びたい
大分むかしですが1部の政治家やタレントさんと、広告で少し知己をえて垣間みた世界です。多くのエンタメ・タレントさんはそれなりに裏での涙ぐましい努力をしておられる。ですがアイディアが重視される職業では「目立つが勝ち」という共通点がある。

「1)危険なアプローチ」でのべた例のゆきつく極端には、違法の方に踏み落ちるドブの境目がある。これがボケと突っ込みですむうちは、悲喜こもごもな面が可笑しい。

しかし普通の仕事では、これらはみな我欲でしかなく意味が少なく、危険ですらあるかを教えてくれます。
最近JRの路線の電気系統に火をつけたミュージシャン?がよい例でしょう。想像するに、この人は自分が有名になれば音楽CDが売れるので助かると考えたようです。

他社の器物を損壊させた罪の意識を感じさせません。必死だったのかも知れませんが。
一般のビジネス社会では通用せず、違法行為ですが、他人のことまで考えがゆかない人間が増えている。タレント業は人の迷惑のうえに成り立っているのかと、危ぶむ部分があります。

売り手にも買い手にもお役に立たないものは社会の役にたてないのです。
もっと地道で長続きのする手法、心をこめた誠心誠意でやるしかないし、正道と思います。
松下幸之助は9歳で奉公にだされ苦労したが、自分の会社を作ってからも会社が潰れるかという危機を経験していますが、電球ソケットからメーカとして大発展しました。

3)天災地変も味方につける?

松下幸之助の言葉 『 復興を支えるのは心』をご紹介します。
『水害が起こった。そして一つの町がすっかり流されてしまった。その隣の町はなんにも被害はなかった。こういう場合がたくさんあります。ところが十年後に、流れた町がどの程度発展するか、少しも被害のなかった町がどういうように発展するかというと、これはたいへんな違いです。流れた町が例外なしに全部発展しているのです
火事もまたそうです。火事ですっかり燃えてしまったところが全部発展している。これも例外なしです。そういう点を見ると、恵まれたと思ったところは、実は恵まれていないんですね

悲惨な状態になった町が十年先には数倍の発展をするということは、何が原因であるか。私は心の問題だと思います。物質的にはなんにも問題はない。これは復興してやらないといけないぞという人々の心の働きによって、変わってくるわけです。これは昔からたくさん実例があります。(松下幸之助1960

以上に見てきた1)危険なアプローチや2)「目立つが勝ち」でもない、3)天災地変でさえ味方につけようとする恐ろしいまでの幸之助さんの信念は、やはり顧客・公共のため、ひたすら努力と誠意というところにあると考えます。

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