2015年12月17日木曜日

15189 「中国旋風」は弱まらない?―緊張緩和はみせかけ

15189ー追記1(12月)

「中国旋風」は弱まらない?緊張緩和はみせかけ


激変の1年でしたが、米国はようやく眠りから目をさましたようです。1年前のアンドリュー・ボーン氏の記事で、<中国の言葉での甘言による緊張緩和はみせかけで米国に油断をさせる戦略>との警告は、南シナ海での中国の自称領海を否定し、公海であるという事実を認めさせる米国の行動への役にはたったようです。また、ロシアと米国が敵対せず、ISではロシアに主導の立場を許したのも前進とみえます。EUはなにも行動する意思やゆとりがないからです。

それでもEU諸国や英国も参加させたAIIB銀行の発足と、IMFに国際通貨として人民元を認めさせたのは、中国にとって成功という見方ができましょう。
だが、ISの危険は中国語の兵士募集まで拡大している現状で、中国もはじめてテロ反対で欧米と足並みをそろえざるを得なかった点に、中国の弱点が現れているように見えます

By ANDREW BROWNE原文(英語)WSJ2015  1  7  10:31 WSJ引用(フォント、着色編者)

『中国の周辺国との関係に目立った変化が現れているようだ。地域のいじめっ子は支援者に変わった。 ここ数カ月、威嚇は数百億ドルの投資に取って代わられている。爆発寸前だったベトナムとの領有権争いは突然静まった。日本との関係も好転している。

全てを締めくくるかのように、中国の汪洋副首相は数週間前のシカゴでの会合で、同国の広範な外交政策上の熱望には米国主導の世界秩序をひっくり返そうという意図は含まれていないとし、中国がこの地域で力を誇示する中で米国の外交政策陣の間で強まっていた見方に反する発言をした。同副首相は、米国は依然として「世界を導いている」と述べたのだ。
 
緊張緩和のように見えるが、これは持続するのだろうか

当てにしない方がいい。中国は領有権の主張を少しも緩めていない
ジョージ・ワシントン大学エリオット国際関係大学院の中国政策プログラム・ディレクター、デービッド・シャンボー氏は、中国外交政策の大きなシフトと見られるのは「大体が戦術的、レトリック的なものだ」と指摘した。同氏は「今年は(中国の)周辺国と米国に対するより厳しい戦術に舞い戻ることになるだろう」と話している。
 
同氏や他のアナリストは、東アジアの運命を方向付けるという長期的な野望、それに、この目標達成のために習近平国家主席が行っている前例のない外交的努力に引き続き注目している。 こうした野望のスケールは大きい。習主席が「アジア太平洋の夢」について語る時、同主席は18世紀に中国が最盛期を迎えたころに同国王朝が手にしていたものさえ上回るような地域支配を心に描いているのだ。

外交攻勢で分からない時は資金の流れをみる

これが実際に何を意味するのか理解するためには、資金の流れを見るといい中国の資金は地域のコンテナ港、工業団地、アジア大陸を走る高速鉄道、ハイウエー、エネルギーパイプライン、その他のインフラに回されている北京はこうした努力を表現するのに「包括的連結性」という言葉を作りだした。

中国の資金の全てが約束通りに実体化するかどうかは議論の余地がある。ただ、その中核部分に中国とネットワークで結ばれたアジアを置くという戦略的目標は明確だ。 話はこれにとどまらない。習主席は大規模自由貿易圏も構想しており、これは世界最速のペースで成長しているアジア地域全体に中国の市場を拡大しようとするものだ。

習主席と李克強首相はこれらの全てを達成するために、熱狂的な外交攻勢に乗り出した。2人は過去2年間に少なくとも17回外遊し、5大陸の50カ国以上を訪れ、外国の国家元首や政府首脳と500回近く会談した。 思い起こしてほしい。彼らは世界第2位の経済をオーバーホールし、共産党のために食うか食われるかの汚職撲滅運動を進めながら、この外交攻勢を優先的に行ってきた。

王毅外相は、習主席と李首相は世界に「中国旋風」を巻き起こしたと誇らしげに口にしている。これは空威張りではない。実際、同外相の言葉は、2014年の最大の外交政策上のシフトにスポットライトを当てている。つまり、中国は今や「機会を待ち、能力を隠そう」というかつての最高指導者、鄧小平氏の行動原理から決定的に脱却したのだ。

米国はアジア市場から逃げられない

しかし、戦闘機や艦隊という形でこれ見よがしに示されるこれらの能力は、中国の周辺国を神経質にさせた。このことは、中国の連結プロジェクトが軌道に乗る前に、これをだめにしてしまう恐れがあり、東アジアでの米国の影響力を弱めるのではなく、逆に強固なものにする。米国は自国には東アジアの防衛者の役割が振られていると考えるようになり、これは中国の意図するところとは正反対の結果だ
 
これが、北京の新たな友好的外交攻勢の背景だ。中国が昨年、領有権紛争が起きているベトナム沖合の海上に巨大な石油掘削リグを作り、大胆な領有権主張を展開した時、ベトナムの大衆は中国企業を狙って暴れ回り、流血の事態となった。しかし中国は今では融和的な言葉を遣っている。中国の高官は12月、今や「メガフォン外交」に終止符を打つべき時だと述べた
 答えの出ていない大きな問題は、習主席は東アジアの新秩序の中で米国によるどのようなリーダーシップの役割を予想しているのか、ということだ。表面的には、米国は依然として世界の覇権者だという汪洋副首相の認識謙遜でないとしたらが、第2次世界大戦後に主として米国が形作ってきた同地域を再構成する中国の能力に関する新しい現実をうかがわせるのかもしれない。同副首相は「中国には米国の立場に挑戦する野心も能力もない」と述べたのだ。
 融和的レトリックのより可能性の高い説明は、周辺国はよみがえった中華思想の秩序の中に強制的に引き込まれることを望んでいないことを中国が認識するに至った、ということだ。
 このことが、「連結性」と「旋風」の外交が平和的手段で目指すものであるようだ。中国が東アジアをその拡大する経済の中に取り込む時には、同地域における米国の地位は弾丸が一発も発射されることなく、小さくなっていることだろう

(私見)
この状況把握は、かなり正確な中国の狙いを記述したものと感じる。それに対する米国の方針は1月20日の今年一般教書で発表された。
フランスでのテロ問題、北朝鮮のサイバーテロの非難が強く入り、アジア太平洋地域の安定に関する政策、みな触れたが軸足に注目が集まっている。
アベノミクス3段目が順調でない状態では、経済優先というのも妥当とせざるをえないから、妥協的なものになるだろうと予想される。

原油価格が暴落し108ドルが6割減となった。米国経済は9月失業率も5.6%とほぼ健全、12月には4.9%となり、ガソリンが減税効果もあり、好のましい状態に近づきつつある。現状では、中東イスラム国との対立は避けたいが、付け込まれるほどの軟弱さを感じさせる中東に米国不在の真空地帯を作らせるほどにゆるくは出来ない
ロシア・シリア対トルコの対立は要注意であり、テロリストの防止策として、新たなイランがなにができるか、そこで日本との連携をどこまで期待するかが重要になる可能性がある。中国もIS側からネットでの中国語のイスラム兵募集があり、急にトーンダウンである。


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