2015年9月10日木曜日

15220 サーカディアン・リズム(体内時計)とは

15220

サーカディアン・リズム(体内時計)とは: 下村 和宏(博士)寄稿

やれ太陽光がよい、朝の散歩だとか、諸説があります。
優秀なビジネスマンやアスリートは体内時計をもっているといわれます。そういうリズムを生み出すのが体内時計で、これからは重要だという下村氏の話をご紹介します。氏はマウスによる検証を長く行ってこられた方です。(フォント・着色などは編者)

体内時計の始まり

「サーカディアン・リズム(Circadian Rhytm)の語源はラテン語のcirca(およそ)、dies(日)に由来します。おおむね1日のリズムと言う意味で、日本では概日リズムと訳されることがあります。そのリズムを生み出す元を体内時計と呼んでいます。このリズムはほとんど全ての生物(単細胞動物から人間の様な多細胞動物まで)が持っています。サーカディアンリズムの最も古い文献は、1729年のフランスで発表されたものです。

オジギソウの葉は昼間は上方を向き、夜になると下方を向くことが知られていました。しかしこの葉の動きは光が全く入らない状態でも外界が昼の時間には上を向き、夜は下を向く事が分かりましたつまり、植物は光に反応して葉を動かしていたのではなく、植物の体内に時間を測る機能を持っていることになります。 引用文献de Mairan JJO (1729). "Observation Botanique". Histoire de l'Academie Royale des Sciences: 3536.

ほ乳類の体内時計はどこにあるのか?

マウスの輪回し行動には非常に正確なサーカディアンリズムが見られます。夜行性動物であるマウスは電気が消える直後から輪回しを開始し、電気が点灯する明け方にはその活動は終わります。この行動リズムは電気が全く点灯しない暗黒条件下でも約24時間の周期で継続されます。つまり、マウスも体のどこかに体内時計を持っていると考えられます。

長年の研究により視神経が交叉するいわゆる視交叉の上に存在する2つの神経核(視交叉上核)にほ乳類の体内時計は存在することが証明されています。視交叉上核は片側約1万個の神経細胞からなり、マウスでは0.1mmと非常に小さい。この神経核を電気的に破壊するとサーカディアンリズムは消失します。視交叉上核を破壊された動物に、他の動物の視交叉上核を移植すれば、サーカディアンリズムは復活します。これだけでは、視交叉上核は単なるリレーの働きをしているにすぎないという可能性は否定出来ません。

そこで移植ドナーとして先天的にサーカディアンリズム周期の短い動物(20時間のサーカディアンリズム)を用いると、移植後の周期はドナーの周期に近い20時間を示します。また20時間周期の動物の視交叉上核を破壊し、24時間周期の動物の視交叉上核を移植すると、輪回しの周期は24時間に近くなります。この移植実験は、視交叉上核に体内時計が存在する動かない証拠となっております。引用文献Ralph et al., (1990) Transplanted Suprachiasmatic Nucleus Determines Circadian Period. Science 247:975-978.

サーカディアンリズムは何故必要なのか?

生物は外界で起こる事にその都度反応しているのではなく、 外界で起こる事を生体が予想していると考えられます。例えば人間は暗くなるから眠くなるのではなく、暗くなる頃に眠くなります。眠りにつく前に体内時計の働きにより、様々な生理学的な変化が体内で起きており、眠るための準備を始めめています。これは寝起きも一緒で、朝起きて活動するための準備を実際に目が覚める前から生体は始めています。

未来に起こる事を予想し、準備する事により、生体への過剰なストレス(場合によっては死につながること)を防いでいると考えられます。

優秀なビジネスマンやアスリートもあらゆる事を想定して準備を怠らないといいます。
その本質をサーカディアンリズムという形で生命誕生の早い段階で、生物達は獲得したと考えられます。」

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