2016年6月28日火曜日

16023(1)英国のEU離脱とその影響(1)

16023(1)

英国のEU離脱とその影響(1)


『EUは英独仏を中心にして成立したから、英国の離脱はEUの終わりの始まりだ』という声も大きく、米国でも金融面や経済面での影響の大きさが議論されている。
だがこれは本当なのか? 一寸違う気がしている。

英国とEUの関係については

「欧州解体」(ロジャー・ブートル著・町田敦夫訳)では、第1ページにメルケル首相とチャーチルの言葉で始めている。(原著の表題は「解体」ではなく「ヨーロッパの問題」)
メルケルは「ドイツにとって欧州は絶対欠かせないアイデンティティーの重要な1部で」「ドイツ統一と欧州統合は同じコインの表裏」であると述べた2011年の発言がスタートだ。どっぷりとEUの中核国の宣言である。

他方でウインストン・チャーチルのヨーロッパ合衆国を樹立し、家族を再生する第1歩は仏独の努力」と1946年終戦の年の発言を引用している。だが、チャーチルのヨーロッパには英国は入っていなかったのではないか英国はヨーロッパではないから、と私(編者)は思う。

EUの5つの主導的信念は英米には軽視された?

1957年に最初の6ヶ国がローマ条約に調印し、1973年にデンマーク、アイルランド、英国の3ヶ国が参加しした。1988年マーガレット・サッチャー首相は加盟国の関係が「深化」するのには消極的で、「拡大」には積極的であったという。つまり英国は国としての1体化には賛成せず、市場統一と拡大を考えていたのだと読める。
おまけに「大きな企てであれば特に、人は自分のしていることに信念を持たなければならない。アングロサクソンの自由市場派エコノミストはしばしばこの点を見逃し、欧州大陸の統合主義的な動きをひどく過小評価してしまう」とまで言う。米国も含めてだろう。

EUの主導的信念は  欧州戦争を避けたい、 1つにまとまるのが自然だ、 経済・政治ともサイズがものをいう、アジアからの挑戦に対抗、 統合は不可避であるとの思い、

米ソの2大超大国に挟まれて自衛のためにまとまりたかった。
しかし戦後のEUは米国からGDPの1%の支援をうけていた事もあり、まず経済再興・成長をすればよいとされた。
(この点は、まずは復興で、借り物憲法でもOKな日本と余り変わらないが、旧敵国と隣接していたドイツは放っておけなかった違いはある。)

『制度が粗悪に作られ、主要な経済的イデオロギーが国家統制主義者や干渉主義者のそれになってしまうと、統合が緊密化するほど経済成長は阻害される』というような心配は共産主義が崩壊し、新興市場が台頭してからおこったという。
また米国も「欧州の民主主義の欠如に気づかなかったこともあったし、君主制を残す英国の民主主義も不完全形と考えているのではないか」という。

EUの統合には英国はフルメンバーとしては参加できなくなった

1995年の国境をフリーパスにするシェンゲン協定には、仏、独、ベルギー、ルクセンブルグ、オランダ、スペイン、ポルトガルの7カ国がマースリヒト条約を結んだ。
だが英国は入らず、2013年に27カ国にEUが拡大しても加わらなかったが、これは上にみた経緯から考えると、分かりやすい。まして英国ポンドをユーロやドルと対抗して維持し続けるのは、基軸通貨ポンドでの通貨経験をもつシティーの金融で儲ける能力を維持する帝国を維持したプライドと、工業的に優れるドイツとのバランスを考えている証拠だろう。

EUは戦争を避けるために1つに纏まり、それは大きくなれば経済や政治にも大きな影響力が持てるという欲も透けて見える。再統合というのは、神聖ローマ帝国以来というドイツを中心とした時代の再現という夢でもある。

ソ連邦の崩壊で、東欧諸国の受け皿にもなろうという「民主主義、法の支配、人権、少数民族の尊重と保護を保障する」夢だけで、各国の具体的なこれらの条件の採用の程度もいい加減である。「EUのミルクカートンの寸法まで統一をいう馬鹿げた連中の指示を聞きたくないという考えがある」と28日朝もハーバード大サマーズ氏はいう。

シェンゲン協定に「社会福祉をえるツーリズムと雇用される労働者を抑えたい」という条件つけは、キャメロン首相も提示しており、日本でも移民の条件とすべき問題であろう。

その意味から、国内で信用や信頼というビジネス社会の核がはっきりしないか欠けた隣国が国際インフラ銀行を目指すのは、急ぎすぎとしか言えない気がする。
欧州との窓口に英国を期待していた中国はロシアと現状の関係見直しと、台湾が「1つの中国」を表明しないため、ホットラインを停止した。よく言えば、恐らく中国もロシアも孤立化を避けたいのであろう。


いずれにしても、英国は何もかもかなぐり捨てた訳ではなく、短期的にはリーマン級のショックがあるかも知れないが、長期的には英国の相対的な地位・影響力は増すだろう。問題は移民による経済の成長と、英国民の雇用をどう維持するかである。2~3年の離婚交渉の後はどういう景色がみえるか、、である。

今回の離脱劇は、国の自立の条件と、他国との環境・条件つくりの困難さをあきらかにしてくれた。もう少し考えてみたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿