2020年1月5日日曜日

番外 Jan.2020 米国からの本年の見通し(私信)   アレックスN原氏 寄稿 

番外 Jan.2020

米国からの本年の見通し(私信)寄稿   
権限を委譲して任せ上司や指示を待たず、報告も不要にしないのが最大の無駄

 米国の金融業界でご活躍の原,N.アレックス氏からの今年の見通しを受領、素晴らしく分かりやすいご説明で、著者の了解を得ましたので、寄稿として皆様にシェア致します(レイアウト、フォント、カッコ、着色は編者)。

『さて昨年を振り返り、又今年を展望するに当たり私見“をお届けします。

昨年は米国では、トランプの弾劾問題で大騒ぎをしましたが、これも下院通過をもって一段落しそうですね。現時点では上院に持ち込んでも、通過することは難しそうです。ただし民主党が主張している数人による証言が可能となると、あるいは弾劾が成立することもあり得るのかな、と思います。そして今年はいよいよ選挙の年。果たしてトランプの2期目が可能となるのか、それとも民主党の大統領が出るのか、今のところ予想は難しいと思います。しかし目下リードしているバイデン(中道派)がウォーレン(左派)を副大統領とした連立を組めば或いはトランプを抑えることも可能なのかな、と考えています。

他方、今年6月頃にトランプの個人のFinancial Statementの提出義務の判決が最高裁で出ることが予想されています。又、トランプの事業のためのローン確保に際して提出された決算報告書税務申告に提出された決算報告書が異なる(二重帳簿)の問題が裁判沙汰となっており、これらの裁判の判決が最高裁で選挙前の出れば選挙に大きな波紋をもたらすものと思います。

アメリカの経済はと言うと、今までは記録的な(低い)失業率に見られるように好景気が続いてきましたが、ここに来て特に製造業にかげりが見えてきたようです。これはトランプの関税により製造コストが上がり、結果利益が圧迫されていることがFRBの統計数字に表れてきました。労働力の確保が難しくなり、必要な能力、技能を持たない人を雇い、教育したものの、結局辞めてゆく、と言った負の連鎖が起こり、利益を圧迫していたことも製造業にとって大きなブレーキとなったように思います。又新規雇用も陰りが見えてきているようです。

しかし最大の問題はやはりトランプによる対中国との貿易戦争でしょう。選挙を控えたトランプにとってはよい成果を出したいところでしょうが、トランプの持ち時間は限られています。中国から見れば時間は中国に有利、と見るのはは明らか。今年中にトランプにとって大きな成果を出すことは難しいのではないでしょうか。であれば現状をNew Normal(新たな常態)と受け取り、それなりの対策を講じることが必要か、と愚考します。今年はアメリカの製造業にとって厳しい年となりそうです。尚、株価を見る限り上昇機運が高まっていますが、株価のみでの判断は危険と思います。

今年のアメリカは多事多難な年のRepeat となりそうですね。
同時にこれは日本にとってもよい話ではありません。

さて日本では昨年は天皇陛下の即位が行われ、よき令和の時代がスタートしました。しかし台風による多大な被害が起こり、更には世界中でハリケーン、サイクローンによる被害、又、各地で酷暑が報告されました。これらは海水温の上昇がもたらしたと言われています。これが地球温暖化と関連していることに疑う余地はないと思います。今後日本は環境問題にどのように対処するのか。

オイ、進次郎君、いったいいつ何をするの???、
 スエーデンのグレタちゃんに大人たちが真剣に耳を傾ける必要があると思います。

他方日本の経済は、というと空洞化を言う言葉はすでに風化し、IRといった安易な政策だけが聞こえてくるように思えます。政府による“働き方改革”も大いに結構と思いますが、企業は成長、いやむしろ存続のために何をせねばならないのか?? 政府が何かしてくれること、又社会が変わってくれるのを待つのではなく、又各社が自ら行うべきこと、やらなければならないことがあると思います。

ここで僭越ではありますが一つ提案させて頂きたいと思います。それは企業の中に未曾有な資源があることに目を向けることです。その資源とはなにか? それは企業内にある“無駄”を除去することです。
日本の雇用体系は定期採用からはじまり、定期的人事異動、年功序列、定年制度。これは最近になって見直されてきているように見受けます。しかしこの制度の下で社員は ほうれんそう が当たり前になってきました。これこそが私のいう最大の 無駄 なのです。この無駄をいかになくすか? 

そのためには企業全体で責任を伴う権限の委譲が行わなければならない。 
 ここで言う責任とはResponsibilityではなくAccountabilityです。Accountability とはすべての社員が与えられた権限内で果たすべき職務を遂行する、決断する。ここでは権限の委譲が前提とな部下に対して、すべて報告せよ、ではなく、自分で判断せよ、と言うべきります。と考えます。 これは企業の存続のため、更にはグローバルでの競争で日本が勝ち抜くために最も求められていること、又、最も明らかなことと思いますが、如何でしょうか。

最後に私の考えるリスクファクター

第一に世界中で自然災害が引き続き起こること。
第二にトランプの再選自国第一主義をアメリカが唱えれば世界のすべての国が同じことをせざるを得なくなります。これはおのずと衝突を招き場合によっては戦争となりえます。世界の国々は利害が一致することはないので、どこかで妥協し、接点をもとめて共存する道を追求する必要があるのではないか。
第三に北朝鮮。北朝鮮の出方によれば  トランプ”  が北朝鮮を爆撃することは十分考えられると思います。もしそのようなことが起こったら 安部さん、どうするの???
第四に中国
 既に国の負債はGDP 50民間を加えるとGDP300以上に膨らんでいます。
 数多いゾンビ企業をどうするのか???
 シャドウバンキングの先行きは???
 100以上もあると言われている自動車メーカーの統合は???
 そしてアフリカや南米での植民地化???
 習近平皇帝の野心は???』        
原, アレックスN.

編者コメント;
報告をすることも無駄という部分は、現在でも日本の大企業では考えられないのでしょうが、商社での私の体験では、鉄鋼部から派遣された支店長、兼務で化学品事業部の支店長代理の上司がおり、何も知らない部分を説明して、許認可をえる制度でした。
1970年代前半のこの制度では、報告しておけば連帯責任だから『どんどん、やれ』と成るかならないかは空気です。明確な業務範囲では、合法であればよいか、いやリスクの数値計測の方法が確立されていなかった。先行きの景気見通しについても、為替が切り上げられたら日本向けに輸出を増やし、バランスでリスクを相殺すべきだという意見を提出して、『ならお前がやれ』ということになる。基準まで自分がある程度考えねばならないが、日本の本社の指示に従うと、本社が「doing business in the USA」になり米国の課税が日本にも及ぶという問題も生じます。じゃ、どうするかですね。米国企業ではそういうことを考える部局が充実していた。

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