2014年9月16日火曜日

14134富山市のコンパクトシティーの事例ほか

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富山市のコンパクトシティーの事例ほか

<時代刺戟人コラム>を引用する(第250回2014年8月21日経済ジャーナリスト 牧野 義司)
(長いので要点のみ掲載、フォント、着色は編者)

人口減少による自治体消滅リスクは深刻、何か事態打開のいい秘策はないのか?(略)
これをきっかけに、メディアでも「人口減少社会」の特集企画を展開せざるを得なかった。メディアとしては、当然のことだが、その結果、いい意味で世の中に危機感が作り出され、政治、行政、さらには自治体に緊張感が出てきた。(略)

取り組みが遅すぎたきらいがあるが、前回コラムで取り上げた大組織病の最大のポイント部分のタテ割り組織の弊害をなくすためのヨコ串を刺す組織づくりに踏み切ったのは正しい判断だ。まずは早急に方向付けが大事だ。

「コンパクトシティ戦略による富山型都市経営」は先進モデル事例

(略)「要はどうすればいいのだ」と言われかねないので、私のジャーナリスト感覚で、「これは先進モデル事例だ」と思った事例を申し上げよう。
 そのモデル事例は、北陸の富山市が進める「コンパクトシティ戦略による富山型都市経営」だ。推進役の森雅志市長から、ある研究会合で聞く機会があり、いろいろ取り組みを聞いていると、人口40万都市での取り組みとしてはなかなか興味深いと思ったためだ。
 
 コンパクトシティ化は、欧州にモデル事例があり、日本では国土交通省が中心になって自治体に導入を呼びかけた。日本の場合の導入のきっかけは、1990年代から地方の主要都市で中心市街地の空洞化現象が起き、地域によっては商店街の一部がシャッターのおりてしまって閉店もしくは休業の商店が相次ぎ始めた。その一方で、郊外部にショッピングセンターが進出、そこには自動車で買物や食事に立ち寄ることが多くなり、一種のドーナツ状の中心部空洞化現象が定着し始めた。そこで、中心市街地活性化策の1つとして、このコンパクトシティ化が具体化した。

富山市コンパクトシティ化は中心市街地活性化が狙い、中山間地域取り扱いに難題

要は、中心市街地に住民が集まりやすくするため、地域を巻き込んだイベントなどを行える地域センターをつくったり、病院や老人介護施設など公共性の高い施設を集中化、もしくはネットワーク化する、商店街の人通りを多くし、かつ賑わいを取り戻すため、さまざまな工夫をこらしたプロジェクト展開することなど(略)、中心市街地を軸に、その一帯を新生活コミュニティ圏とする。そして自動車に乗らず、路面電車や乗りやすいバスを使うか、あるいは歩いてゆっくり動き回れるコンパクトな町にするということだ。

 ただ、地域的な広がりのある都市の場合、中心市街地を軸にしたコンパクトな町づくりにすると、中山間地域が取り残されるリスクが出る一方で、新たな町づくりには財政資金がかかること、中心地域の利害調整に時間がかかること、住民の移動を必要とするため、合意形成にエネルギーが必要なことなど難問が前面に立ちはだかることも事実だ。富山市の場合、それらの問題を解決しながら、具体的に、どう取り組んだのかが関心事だ。

森・富山市長「公共交通ネットワークづくりを軸にコンパクトシティ化めざした」

 私が参加したある研究会合で、富山市の森市長はいくつかポイントとなる点を挙げた。まず、森市長は富山市が直面する問題として、
1)人口減少と高齢化 
2)過度な自動車依存による公共交通の衰退 
3)中心市街地の魅力喪失 
4)割高な都市管理の行政コスト 
5)社会資本の適切な維持管理など
の課題を掲げ「20年、30年先を見据えて将来の世代に責任が持てる、しかも持続可能な都市運営、町づくりが必要だ」と述べた。

 (略)コンパクトな町づくりの基本は、JR北陸本線富山駅を中心にJRの鉄道、富山地方鉄道市内軌道線、それに富山ライトレールという軽量の車体を使った都市型軌道システムなど6つの路線鉄軌道をはじめとした公共交通をつなげてネットワーク化すること、とくに、市内中心部を走るライトレールトレイン(LRT)を環状線化して、過度に自動車に依存したライフスタイルを見直して歩いて動き回り、かつゆっくり暮らせるように、LRTの沿線に居住、商業、業務、文化などの都市機能を集積させることだ、という。
 
中心市街地への住民の移住推進で住宅建設助成や多目的イベント施設づくり
 富山ライトレールは、JR富山港線の鉄道に富山市がテコ入れして公設民営の経営にし、2両1編成で軽量の電車を走らせ、今では富山市内の市内電車環状線化を実現させた。既存線、公共バスも加えて、中心市街地に来る利便性を増すようにした、(略)。

 また、中心市街地の活性化策として導入したプロジェクトは、森市長によると、7年前に富山市を事業主体に建設したガラス張りの全天候型の多目的広場グランドプラザがその1つ。今では市民のイベントに活用され、年間では休日100%、平日73%の利用率だという。中心市街地には「地場もん屋総本店」という地元農水産物の地産地消の拠点をつくった。180店舗が加盟店となり、その共同出資による「株式会社まちづくりとやま」が運営主体だが、60歳以上の年齢層がとれたて野菜などを買い求めに来る、という。

富山市への住民転入超、周辺部から中心市街地へも転入超

 このほか富山市は高齢者が中心市街地で快適な生活を送れるように医療や介護の施設を充実させた。若者や女性が中心市街地で働けるように企業誘致も活発に行ったが、コンパクトシティ化をきっかけに、中心市街地で居住者が増えただけでなく、市街地再開発のプロジェクトに民間投資が増える好循環現象が起き、それが雇用創出にもつながった。(略)さまざまなアイディアをもとに、プロジェクト展開が行われ、40万人口の都市で、こんなに躍動的な取り組みもめずらしいな、という印象だ。

問題は、富山市のコンパクトな町づくり効果がどこまで出たかだろう。森市長によると、2012年4月から翌年3月末までの1年間の富山市全体の転入、転出を見た場合、差し引き300人の転入超過となったこと、また富山市内での人口移動として中心市街地では6年前から住民の転入超過に転じ、今もその傾向が続いていること、中心市街地の歩行者数が着実に増え空き店舗が減少したこと、中心市街地の小学校児童数が5年連続して増加傾向を続けていることなどを挙げ、「間違いなく政策効果は出ている」と強調した。
ただ、森市長は、市の周辺部や中山間地域の人たちに対しては、中心市街地を軸にしたコンパクトシティ化のメリットを伝えるが、市の中心部への移住や転居を強制することは行っていない、という。確かに、このあたりはジレンマと言えそうだ。(略)


コンパクトシティ化は部分最適か全体最適かの判断難しい

 コンパクトシティ化を現在、積極的に導入しているのは富山市以外に、北から順番に行くと札幌市、稚内市、青森市、仙台市、豊橋市、神戸市、北九州市などだ。
このうちコンパクトシティ化にいち早く取り組んだ青森市の場合、(略)成功例と見られたが、「アウガ」周辺部分を除けば、商店街全体では歩行者数が増えておらず、波及効果は大きくなかったので、政策効果は限られている、という。(略)

その半面、中心市街地から遠く離れた中山間地域の人たちのうち、先祖から受け継いだ土地を離れたくないという住民の人たちの問題をどうするか、実に難しい問題だ。部分最適と全体最適のバランスをどうとるか、自治体行政にとっても難しい問題だ。(略)

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(私見)
地形や天候、冬場の産業、雇用対策、それぞれの地域にあった発展策が求められている。
県内での中心都市が、医療などのサービスで高齢者を引き寄せれば、周辺町村の過疎化に拍車がかかる。つまり表現は妥当か疑問だが、年金という税収のない収入の受取人を、医療で囲い込んだとも言えるからである。
里山のような個人ベースの活性化では、他者を雇用する規模にならぬため、メディアなどでとり上げても、せいぜいプラスマイナスゼロで終る。税収につながる職業であることが求められている。

雇用に拡がるには、将来への夢が共感がもて、目標が絞られていて、参加を希望するだけの製品やサービスが見えるものになる必要がある。つまりは、企業誘致できるだけのメリットを用意するか、事業化するリスクにかける人材がいる。


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