2014年2月20日木曜日

14059 米国へ戻るかメキシコか

14059

米国へ戻るかメキシコか


静かな流れが起こっているのは、中国からの製造の流出である。というよりは、進出時の条件が大きく変わったことによる逆流なのだ。日本企業に限った事ではなく、米国企業も同じである。戻る先が米国かメキシコか、アジア諸国かで若干の選択肢の違いはあるようだが。WSJ05/12/2012、Tia Nowack,Industrial Maintenance & Plant Operation  01/28/2014など)

その理由は、米国の経済が回復し始めていることもあるが、やはり中国の労賃そのものの高騰、それに単能工で融通がきかず、中国からの加工品の戻し運賃も高くつく。それに手抜きをさせないための検査コストなどもある。米国へは戻らずメキシコへ流れているものもある。

米国に戻りつつある製造業

規模はかなり小さいが、洗濯機などでは有名なワールプール社も、台所ミキサー組み立て25人分の仕事をオハイオに戻したが、他の小さな事業も検討を始めているという。マスター・ロックという鍵メーカーは100人分の雇用、オーチスエレベーターは360人である。大手のGE、キャタピラー、フォードなどがその1部分2千人分を米国に戻している。

97年~2010年の間で、全体製造業の3分の1に相当する600万人分35%ほどが失われたあと、合計で489千人分;4.3%から、3分の2の11.9百万へ戻している。
調査会社のIHSの調べでは12年は3.2%に上昇するというから、経済全体が1.6%上昇に比較して考えれば悪くは無い。他社の調べでもここ2年で25千人が戻るといい、105社の調べでも39%は検討中という。

米国に戻すか、他国へ移すかの比較では、アジア諸国だけの問題とも言えず、アジア製品はアジア市場、北米製品は米国向けでと、地域での売れ筋や価格にも合わせることになる。ワールプールの場合は、ミキサーでも高級品は230ドル、安いものは39ドルである。

戻す理由の第1は労賃で57%、次に品質41%などがあるが、業種ではプラスチックやゴム製品会社は67%、機械42%、電気機器41%、溶接物35%などが戻すと答えている。
中国市場の巨大さという魅力をいう声はなく、労賃が上がり米国の賃金に近づいてきて、運賃他を加えると魅力が薄れたというあくまで米国市場への販売を考える声が多い。中国の国内市場が後進国なみで成長しないのも蔭の理由である。

メキシコが米国への回帰でなく回近でと誘致

日産が工場を造りマツダも建設始めた勢いが加勢してか、日系企業の最近はメキシコにも進出ラッシュが続いているが、加えて米国企業の中国からの回帰移転先としての進出も多い。
メキシコのメリットは44ヶ国とのFTAの関係、カナダ、ドイツより多い毎年10万人以上の大卒技術者の増加という点でも自信を高めている。

『中国では輸入部品が8%以下だが、メキシコなら40%以上は米国からの輸入部品という協調路線をとっていますよ』と利点に挙げている。自動化率の高い組み立て品の工場は米国に戻し、手作業率の高い組立工場はこちらへどうぞという差別化での誘致を強調している。

米国と隣接する国境は麻薬取引で治安がよくないが、内陸地域は問題は少なく、社員の送迎バスをだして貰えば心配ないという。もっとも、米国内でも医療用のマリワナ(大麻)の販売を認める州も増えているから、国境の密輸は時間の問題でなくなるという楽観者もすくなくない。日産のゴーン氏は、メキシコ工場を輸出のハブにと考えているとの意見もある。

 

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