2014年7月19日土曜日

14116 各産業の将来像(学びと雇用の関係)(4)ー2

14116

各産業の将来像(学びと雇用の関係)(4)ー2
   (クリステンセン講義;14115の続き)

産業界でいえば、会社での職務の分類、大学では学科の項目などを縦に列挙すると(表左欄)、これらは学科としての枠組みと科目間の統合性という共通条件で縛られるから、1つを取り出すことは簡単ではないと述べた。




左欄縦の方向でのイノベーションは時間も掛かるのは、マイクロソフトの言語アーキテクチャーで書かれたプログラムを、コントロール・データに組み込むのは膨大な作業になるのと同じである。

縦の職種(科目)は統合されていたがため、それぞれを1つだけ取り出すのが大変だったが、モジュール化で右欄の科目内でのイノベーションは瞬く間に容易に行えるようになった。 
 (縦棒線左からIBM、コントロール・データ、ディジタル・エクイップ、アプライド)
  
『誰のためにでも、何でも作ります』で経済性(競争力)を保てるか

GMのポンティアック工場は『どんな部品でも、どこの会社のためにも作れます』という素晴らしい工場であった。それぞれの加工工程は高価な工作機を集め、高価な熟練技師をつけてグループ化させ、顧客の作りたい部品(要素)を相手の望む順番で、切断、丸加工、穴あけ、中ぐり、歯車可能、ストレス抜きなどができる。
これを各社からの好みの工程でばらばらに引き受けると、それぞれの工程間での移動コストは、労賃を1とすれば、移動1、2、4、8回と2倍になる毎に一般管理費で3割ずつコストが上がることが分かった。それで労賃は管理費こみでは6.2倍になった

片やオハイオ州の工場で、こうした工程を1番頻度が多く重なって動くものに2列に絞り、真っ直ぐなラインにして、何でもやるとは言わないが、『特定のものを我々の決めた順番で加工することに合意してくれるなら、労賃は大幅に安くなる』というものが、ポンティアック工場より15年も前にできていた。そこでの労賃は一般管理費込みで2.2倍であった。(両工場レイアウト概念図は;ビデオ参照(https://www.youtube.com/watch?v=yUGn5ZdrDoU

これは総合病院も総合大学も同じで、それで学費がどんどん上がり、その結果MBAクラスの卒業生は初任給で16万ドルとなってしまい、これが払えるのは、ウオール・ストリートのインべストメント・バンクだけになりそうだ。病院も1つのことを治療する専門病院は安いが、総合病院はその何倍にもなってしまうのは、そのためである。

大学だけでなく、世の中の問題の解決する組織は大別すれば相容れない3つである。
1.ソルーション・ショップ;マッキンぜーなどコンサルタントはこれだ。問題を点検して特定して、解決策を選択する。大学のリサーチも同じである。
2.プロセス・ビジネス;これにはメーカーも含まれる。
3.ファシリテイティド・ネットワーク; ユニオン(組合)、ギルド、テレコマース、保険など会員制で、掛かった費用に上乗せしてくる組織。

そこで大会社では、社内に経営者育成の大学を始めている。そしてハーバードMBAは世界的に先駆者のような教授が多数いる。(比較経済学)マイケル・ポーターの講義を聞きたい人は多い筈だ。
それは、個々の学生の要求に合わせて『何を考えるか』を教えられなくても、『どう考えるか』という考え方を教えることは出来るのだ。これは教授を商品化することであり、誰でも相手をする売春婦のすることだと非難する声もあるが、他者が始める前にやることではないか。そこにスケール・メリットというチャンスがあるのだから。(ハーバード内部の激論が聞こえてくるように感じた。)

(私見)オンライン・ティーチングは、内容を理解しているかが不明な『判った気になる』聴衆(会員)をつくる面では、新らたなビジネスチャンスである。オンラインの方は、鉄のスクラップのミニミルであり、既に出来上がったものをリサイクルし転売する事業であるから、これはこれで新事業とも言える。

しかし、講義の内容に質問や疑問を抱える仲間が横にいて、良いコーチがいるから、興味がや想像が広がり、精一杯の知恵をしぼり競争する部分の臨場感の再現は何処まで可能なのか。ある映像を見たときに、それを皆が同様に感じえるのか。
イノべーティブな人材と、理解力の優れた人材は、同じような学科の組み合わせなのか、大きな疑問をもつ。その意味で少人数のカスタム教育の意義は消えないと思う。

製品グループの中でも底辺の安価で利益率の低い部分への参入は、それに対抗するよりは譲ってしまうが、その参入者が品質を上げ中位から上に間口を拡大してくると、止めるのは難しい。それらを実践してきた人には、同意せざるを得ない分析である。
 
その防止・対抗策として、最高の製品群の維持とそれに要するイノベーション努力は、今日のドイツの自動車技術に1つの模範がみえ、またハイブリッドや電気車に日本のメーカーのイノベーションに可能性をみる。
ITOSやアプリ部分をモジュール化と見る点がユニークである。教授の分析は、私が述べてきた商品寿命とは別の観点のオーバーヘッド経費と、モジュール化である。

もう1つは、ことに次世代の人たちが、創業世代が持っていたモノ造りに要するマス・サイエンス・エンジニアリングを学ぶ努力を継続できるかどうかである。
その意味では大学は学生の得意分野に特化できる隔離環境が望ましい。国の経済力が上がるにつれ、学生達は努力や苦しみに耐えるよりは享楽(スマホ・バイト・飲み会)に流される生活を求める。

親は子供に対しただ優しくして、厳しくしつけ将来の苦難を警告し備える努力を怠る。成人しても親元にい続け、金も払わない子供を増やすのは、亡国の兆しと考えられないか。

継続力には精神面の忍耐・耐久力と技術面でのハングリーな学究人材のレベル維持をする環境が条件になる。つまりは、教育と環境に重点が戻る。



0 件のコメント:

コメントを投稿