2013年7月14日日曜日

13704細分化を脱し、広い分類で中長期志向に戻ろう [035]

13704

細分化を脱し、広い分類で中長期志向に戻ろう [035]


優等生を最大の無駄にしていると思うのは、企業でも官庁でも職務範囲の決め方が古い産業の仕分けに基づいていることである。行政官は多くの時間をこうした、細分化された縄張りの調整に費やしているが、改善の工夫の余地があるはずであろう。

自慢話ととられると困るのだが、商社マン時代にシカゴに赴任して、東京本社の10余りの部門から毎日くる依頼事項を3人で扱っていたが、1人でやってといわれた。
意外に楽にやれた訳は、それぞれが持分を決め、それ以外は誰にするかという毎朝の調整議論とミーティングが不要になったこと。どれを急ぐかの判断も1人なら早くできる。

複数が分業にして3者3様にやるとアシスタントも混乱する。プロセスを決め米人女性1人でできるようにして渡してしまった。自分の経費分を含めた採算がとれていたから、『ここから先は、君のやりたい事を始めてもよい』といわれ、自分としては自由を買った気がした。
つまり人数が多すぎると逆に時間がかかることも多いのだ。統一したシステムを創り、誰でもやれるようにすれば3倍の効率になるという今でいえば行革の話であろうか。

 定期人事異動は必要か(期限によるムダ)

(A)3年で異動したら視野が狭まり、活動範囲も減る
なぜ日本人は短期の視野でしか考えないか? それは3年から5年で異動するからである。
行政官の任期はなぜ短いのかはさておき、民間がまねをして異動する必要はない。一人のエキスパートをのさばらせ、権力も能力も集中させない行政上の古い予防習慣だと聞いた。むろん本人の能力開発や経験のための異動もあるが、会社のためによいことをさせるために雇っておいて、悪い事をさせないために異動させるとしたら、大きな無駄である。

そのため経営能力やコミュニケーション能力が身につかぬ内にただ移る。こんな無駄をやっている余裕はもうなくなっているのだが。
シカゴにも350社をこす日系企業があるが、一部の例外を除いては、支店長は皆3年くらいで交代する。殆どが支店の社員と主要顧客を年に1~2度訪問したら交替である。せめて5年は滞在し、仕事の責任者としてだけでなく、お寺や日米協会などで意見交換したり、周囲の異業種との交流や大学などで意見発信して貰えぬかと思う。

思想も信条も分からぬ者には米人は胸を開いて話してくれない。楽しくプライベートな時間をもち、意見交換した間柄にならないと本音は聞こえてこない。この公と私の意見が世界への発信になり、米人に好感と理解をもたれることが日本の防衛につながると思う。 

日本の中で活発な意見が出されている尖閣問題や南京事件などについても、企業の長は殆どが興味を示さないし、短期の業績優先で議論もできない。近隣国は永住者が殆どで、米国内での影響力はどんどん差がついて、日本人は隣国に政治的におしやられていく。少子化も起るまでは対策しないし、その内米国市場を簒奪されないかと心配だ。

(B)入社式をやめたら  
東京大学が9月入学の検討をやめたらしい。海外からの学生も呼び込んで国際化すれば、各学部で国際化への必要性の緊迫感が違うから、世界で1流になるべき競争部門だけでスタートすればよいのに。大学生でも基礎の勉強が終わっていないのに4月の入社式にあわせて、ところてん方式で期限(納期)にあわせて卒業することが優先されるべきだろうか。

覚える学習でなく考える方に重点が置かれれば、卒業前のインターンやパート入社や卒業後の海外旅行もできる。卒業単位が取れたら就職できればよいし、企業も年功序列を止めれば4月に入社する必要はない。米国では雇用は会社の1部門と個人の契約だから入社式などやる発想がないし、得手不得手で理解度もちがう新卒を全国1律などという考えがない。
中途採用者に人材が増えれば、《必要な期間、必要な人材を》という新たなブレーンの雇用分野が拓け、雇用の流動化と自由化が拡がる。

(C)リーダーとしての教育(日本で欠けていないか)
最近は例外もいるようだが、4大生の弱いのは人やモノの動かし方の経験が少ないため、特に人よりできること(知識)を強調する傾向がある。米国では地位と機能で人は動かすが、各人の達成目標を明確にし、つなぐのはコミュニケーションである。

専門学科と知識を職場や現場での道具が欠けているのだ。(リーダーに限らず)教育で欠けているは、そこには批判的な思考力や、倫理的な判断が要求され、書いたものの理解ではなく、力強い議論での説得力を求められる。
http://www.clemson.edu/academics/programs/eportfolio/competency/Clitical ThinkingやEthical Judgemenetを参照されたい。(インターン諸君の下段翻訳をご参考まで)

一言でいえば年功序列に頼る管理能力の欠陥ではないか。つまりは目標(ルール)と成果で評価(違反を罰する)で人事を避けるためだ。
相手にわかる説明で納得させて、見ていないところでも実行することが本人の利にかなうから実行するという部分が不十分なのだ。やらないと損をするぞという圧力よりは、やれば得をする仕組みでないと、目が届く範囲しか管理できない。

どこの大学でも同じで教授は研修室の学生を囲いこむ傾向があるが、自由度と異業種と接点が多い方がイノベーションに繫がるように思う。
ある大手建機メーカーの代表者は卒業してから1年間かけて南米を徒歩で1周してきたから『日常会話のスペイン語は英語より自信がある』という。何よりも多様な異文化の各国をサバイブできた自信とコミュニケーションの力がすごいということであろう。

会社では守備範囲を広げ、結論がでるまで時間と予算をかける必要がある。それには、ある程度の専門分野を各人が受け持ち、外部に出ても戻っても任せられるレベルのスターを作るべきである。今の制度は人の能力で任せないために、無理やり異動するムダをしているとも云え、それよりは信用して任せ監視・罰則を厳しくする方が合理的である。

(D)開発でも思考の細分化の逆に上流に戻れば<宝の山>がある
いま注目されている新分野では、iPS細胞などは手足などの人体の細胞分裂をさかのぼり、受精卵から分化していく時点で、特定の部分を自然増殖させたものといえる。
アップルのジョブスのiTuneはインターネットから送られる音楽を、如何にダウンロードするかまでさかのぼり、その集配機能を形にした。TEDで紹介されたプラナフはPCのマウスを分解して位置決めスイッチ機能を持ち歩きにし、PCの1部の機能だけを取り出し、液晶パネルを使わぬ用途を考えた。(http://tr.loopshoot.com/id/685)
少なくとも私には、これら3者には共通するものがありそうに見える。

日本の開拓した原発用のロボットでも、改良点は既存の建物のドアノブ(円形)を全部L型ノブに替えれば掴み開くグリップ部が単純化できないか。既存の建物のドアを開くのではなく、非常時にロボットが開け易いように取り替えてしまうという発想である。ロボットメーカーは建物の建築業に立ち入れないと考えると、こうは考えられない。
今、福島で放射能汚染水の漏れを騒がれているが、これは土木の地下連続壁工事(地下鉄・ダム止水壁)などのプロは経験済みの分野であろう。

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ドイツ、イギリス、アメリカの3カ国で学び体感した、日本の高等教育に絶対的に欠けているもの。
Clemson大学の一般教養課程は次の8つで構成される。
1. 芸術、および人文科学, 2 異文化への理解, 3. 数理的処理
4. 自然科学, 5. 一般社会における科学と最新技術, 6. 社会科学,
 7. 倫理的判断, 8. 批評的思考。(Clemson;全米2600公立大のうちで25位+-

この7 ‘倫理的判断8 ‘批評的思考’ が、日本の教育に欠けていて、実社会で議論する際に重要で、リーダーには不可欠である。欧米では、この2つの能力を補う準備段階として16の教科があり、各学生は、そこで学んだことを土台に説得力のある議論が展開できるようになる。(翻訳者の私も、欧米への留学でこの2つをよく注意され、求められることを理解するのに苦労し、議論に参加できず傍観者になることがある。)


7. 倫理的判断
倫理的な問題点を社会全体を通し、また社会的責任を尊重しつつ明確にし、理解し、また適切に対処できること。1つの議題に対して多角的に分析し、単に既存の意見を羅列するのではなく、実際にクラス内でデリケートな話題に対して生きた討論を行う。具体的に、幹細胞研究、妊娠中絶、死刑罪、クローン実験などがテーマになる。(M.サンデルの白熱教室もこれである。)

8. 批評的思考
一般教養科目を通し、吸収した知識の質や有用性を批評的に判断し、またその思考方を科目以外の問題にも応用すること。具体的には、提出課題、それに集めたデータなどを十分見返し、学んだ知識を再評価し、将来のキャリア形成に役立てる。また多量のリサーチやデータの分析を必要とするキャップストーンを行うことで、この能力を高める。


参照: Clemson University. General Education Competencies. Available at:http://www.clemson.edu/academics/programs/eportfolio/competency/.
 [アクセス 8 July 2013] 翻訳者:世良英誉, University of Exeter, Intern at ITA, Inc. hsera@saas.itaoffice.comhidetaka.s@me.com.

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