2013年7月6日土曜日

13703会社が陥るかもしれないSNS利用従業員とNLRA法との問題【034】


会社が陥るかもしれないSNS利用従業員とNLRA法との問題

山本 真理 氏;バーンズ&ソーンバーグ法律事務所/日系企業部門代表パートナー弁護士

最近、フェイスブックに関して面白いニュースがあった。アメリカのあるアパレル店で、店員同士が会社やマネージャーの悪口を言い合い、フェイスブックでもそれを続けていた。やがてそのマネージャーの目に留まり、店員たちは解雇された。ところが、解雇通達の場で、店員たちは小声で囁きながら嬉しそうに笑い合っていたというのだ。
アメリカの労働者保護法であるNLRA法を知っている人は、にんまりしただろう。
従業員が互いに労働条件や賃金について語り合うことはNLRA法で保護されていて、従業員同士が会社、上司についての苦情を言い合ったために解雇され、従業員が会社のNLRA法違反を訴えた場合、会社にはまず勝ち目がない。
これはフェイスブック上でも同様で、現在までのところ、フェイスブック利用に関する解雇でNLRA法の違反を訴えられた場合、従業員側とNLRA法が圧勝だ。つまり、この事件では、店員たちはマネージャーと会社を「はめた」のだ。   

会社側は「罠に掛けられた」と主張したが、NLRA法で保護する「労働条件を語り合うこと」を禁じたことには代わりなく、会社側が不当解雇とされたようだ。不当雇用や労組問題に敏感なアメリカ人は、解雇された場合、なんとかして会社から金を取ってやろうと考えるし、何かにつけて、企業をはめてやろう、賠償金を取ってやろうと虎視眈々狙っている。企業側の立場で見ればゾッとする話だろうが、アメリカらしい事件だ。      
では、アメリカではフェイスブックで会社の悪口が言いたい放題か、といえば勿論違う。日本でも、店員が有名人客の悪口をTwitterでつぶやいて大騒ぎになる例がいくつかニュースになっていた。  これはアメリカでも当然起こっているが、日常茶飯事なのか、余程でなければニュースにはならない。
労働条件について従業員同士が語り合うことを保護する法律もあるが、他人の誹謗、中傷、名誉毀損から個人、団体を保護する法律もあるからだ。    
更に、合法的な就労規則で禁じた行為を冒した従業員が、合法的に解雇された場合は、従業員が会社側を訴えても裁判に勝つ見込みはまずない。フェイスブックで労働条件や賃金について苦情を言い合うことは保護されるが、マネージャー個人を中傷したり、会社の評判を落とすコメントや、製品に毒が入っているなどと事実無根の虚言を流したりすることは当然保護されない。
会社の公開してはならない情報に触れたりした場合は、フェイスブックだから個人的なコミュニケーションという言い分も通らない。フェイスブックへの発言で解雇になるだけでなく、従業員の方が罰則を負うことにもなる。企業は企業で、相手が個人だからと大目に見たりはしないのもアメリカなのだ。
SNSのように新しいカルチャーやテクノロジーが登場すると、これまでの常識との境界線がぼやけるため、今回のような事件が起きる。従業員側も雇用者側も、日本の常識、感覚のままでSNSを利用すると、職場を介した場合は特に、今後も思わぬ落とし穴がありそうだ。
ご質問は、山本真理(mari.yamamoto@btlaw.com、312-214-8335)までお問い合わせ下さい。
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