2014年3月29日土曜日

14076 米国は製造への静かな回帰が始っている

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米国は製造への静かな回帰が始っている 

中国経済は世界一になるというが、その多くは外国資本により製造されたものが再輸出されることによる、世界の製造拠点。これだと労働者の提供と工場のスペース貸し。その多くは工場内外でコピーされて、他の工場でも製造されて、時間の問題で中国化できるという期待と、自国で作るより安く利益も大幅に増えれば良いではないかという、米欧の資本家の利害がマッチした。

ところが、労賃の急騰で利益は減るばかりか、中国側の再投資が不動産にまわり、財政危機となった。東南アジア各国への領土侵害も始って、ようやくこれは大変なことになりそうだという認識が、いまリショアリングになって米国に戻っている。

Jetro News American Policy~米国の経済・通商政策情報~の1部を掲載の了承を受けたので掲載する。それは(59)で述べた米国に回帰する製造業の企業のトレンドに関するものである。

企画から設計、製造までのスピード感重視

 電子機器受託製造サービスのフレクストロニクス(Flextronics)(本社:シンガポール、米本社:サンノゼ)は、マイクロソフトの家庭用ゲーム「Xbox(エックスボックス)」本体やグーグルのスマートフォンなどを製造する。
同社は 2013  2 月に、米本社近隣の製品イノベーションセンターを拡充し、最新型の 3D 金属プリンター、電子部品をプリント基板に取り付ける表面実装機(チップマウンター)、X 線のテスト機器などを導入し、プロトタイプを迅速に作れるようにした。同社ウェブサイトによると、この拡充投資によりプロトタイプは 72 時間以内に製造できる。このために既に 1,200 万ドルが投じられており、この先も 2,000 万ドルが追加投資されるという。

 シリコンバレーでは、携帯端末など、トレンドの変化が急激で発売までの時間が勝負と
なる競争の激しい製品が多数開発される。企画・構想から開発・設計、そして製造に至る
までの工程を短くするには、試作品を制作する開発現場と最終製品の製造工場が近くにある地域が、そうでない地域よりも有利になるからだ。

 精密機械などの製造業では、高度で専門的なスキルを持つ人材が必要になる。こうした
場合にもシリコンバレーに地の利がありそうだ。医療用ロボット製造のインテュイティ
ブ・サージカル(Intuitive Surgical、本社:シリコンバレー)は、外科医のための手術
支援システム「ダ・ビンチ」を開発・販売している。

3D 高精細度(HD)技術を駆使し、均質で高度な医療を繰り返し提供でき、医療コスト、医師のストレス、医療リスクの軽減が図られている。2012 年末時点で日欧米、中南米、東南アジアなどで 2,000 以上の病院に計2,500 機を販売、2012 年の年間売り上げは前年 24%増を記録し、2011 年には約 1  4,000平方メートルの工場も開設した。日本の病院にも導入事例がある。

 この非常に緻密な手術ロボットを製造するには、高度な技術を持ったエンジニアが必要
になる。同社のゲーリー・ガットハート CEO は「エンジニアが製造拠点にいれば、顧客の
要望に即座に対応でき、イノベーションの加速にもつながる」と強調する。

国内回帰には品質管理上の利点も

 中国からシリコンバレーに国内回帰(リショアリング)した企業もある。スーパーマー
ケットで使用されるワイヤレスのデジタル値札を製造するアルティエール(Altierre、本
社:サンノゼ)は、自動化を徹底して、2011 年に中国の製造拠点を本社のあるサンノゼに
移した。現在は、サンノゼに 100 人余りの労働者を抱える。

 同社のS.サクセーナ CEO は、愛国心から仕事をシリコンバレーに戻したいという気持ちもあったが、経済的にも利点があったと話す。同社が中国で支払っていた時給は 4ドルだったが、米国では 1017ドルかかる。それでもサンノゼ工場は自動化が進んでいるため、生産効率は中国の3倍で、労働力を必要としない分、コストの合計はあまり変わらないいう。また、コスト面だけでなく、品質管理面のメリットも強調する。米国への拠点移設後、不良品の割合は完成品の 30%近くから 5%に減少したという(「サンノゼ・マーキュリー」誌 2012  9  18 日)

 このような製造業のリショアリングについて、ランドルフ CEO は「確かにシリコンバレ
ーでも個別企業がリショアリングしたという事例はあるが、今の段階では実例が少なく、
トレンドとは言い切れない」との見方を示す。一般にリショアリングは、中国などでの労
働コストの上昇を背景に、米国での製造コストとの差が縮小してきたことが背景にあると
される。しかし、サンフランシスコやシリコンバレーの製造業は、リショアリングよりも
むしろ商品開発に要する時間を短縮し、市場の動きや顧客の要求にタイムリーに応えて、
素早く製品化することを追求している。(1部省略・フォント・カラー変更はブログ管理者による)

(横山沙織、木村洋)Copyright (C) 2013 JETRO. All rights reserved.

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