人が移動しやすい社会のしくみ【014】
上司と部下の関係でボスが部下にやって欲しいこと、やっては困ることの規則や判断基準を決めず、「何かあったら遠慮しないで相談しなさい」という親切なケース。実際は何でも頻繁に報告し会議の出席率の高い者が「真面目」と評価される。
上司も会社の将来のために何か新たなチャレンジをしたかより、何がおきているかの把握力のほうが評価される。すると自分の席から動かない待機中の人が出世してゆくから、現場が分からない人が増える。しかし戦略をたてる責任(=リスク)がない伝達や報告仕事は、それに見合う報償がついてこない。
これからは『何でも相談しないで、任せるから考えて動きなさい』『やりましただけで良い』という会社の方が結果重視だから行動的になる。
1周遅れが勝つゲームより業種・職種での移動がしやすい柔軟性
大会社の社員は、社内競争で人より一歩でも早く昇進したいと競争するが、これは未だにおかしいと思う。若い頃シカゴで特殊機器の北米全体の販売を任され、社外の欧米メーカーと競争していると「うまくいったのは会社の名前で仕事ができたからだ」と水をかけられる。その内「本社課長というチャンスなので戻れ」と言われた。
大会社の社員は、社内競争で人より一歩でも早く昇進したいと競争するが、これは未だにおかしいと思う。若い頃シカゴで特殊機器の北米全体の販売を任され、社外の欧米メーカーと競争していると「うまくいったのは会社の名前で仕事ができたからだ」と水をかけられる。その内「本社課長というチャンスなので戻れ」と言われた。
課長の担当は関東一円、地理的にはシカゴ圏のサイズで、この本社の口説きに全く魅力を感じられない。北米の広さから急に狭い箱に入れられると感じた。37歳で残り半生を出来上がった会社の階段を上って終わるのは空しい気がした。
『会社ではなく自分が仕事をしているんだ』し、米国で生き延びられるか、何ができるのかチャレンジする方がよほど面白そうだと感じた。たまたまだろうが、幾つかの事業部をつくり、その苦労も面白さも判ったからである。
会社にもよるが、当時の日本での営業は企画と実行の機能(情報収集+情報分析の立案部と実行部)は分かれていないが、何をやるかのハコが決まっていたのだ。本社機構が、市場論理よりは運だよりに見えた。理由は当時は先述したベルカーブでの頂点などを業種別に調べていなかったからだ。
図のAさんの商品が先に上位に昇っても、50歳のとき所属する業種が下り坂になっていたら、上り坂にいる一周遅れのBさんが上になり役員になる可能性は高い。
サラリーマンの場合は、さらに相性のよい上司に恵まれるかという運が求められる。
どんな業種でもいえることだと思うが、商品寿命がある限り入社して1度か2度は必ずベルカーブの下り坂を経験する。ピークに達したら、その業種に留まって流れに逆らって櫓(ろ)をこぐか、社内で別の伸びる業種に移れるか。よその部に移って勤続年数で管理職のポストがあるだろうか。それとも伸びる業種を調べておいて、その内のご縁のできる会社に移るかである。 (グラフはインターン by T.Kawata)
ポートフォリオ投資について述べたが、いま働いている分野に近く、伸びている業種のなかのやれそうな職種を注目し続けるのも役立つ方法だ。情報と人が移りやすくするのがインフラ政策として重要になれば、個人は移りたい業種を考えておくことになる。更にこの30年間のグローバル化で、会社の業務処理と印刷のディジタル化、通信のEメール化と携帯化、英語化が加わり大きな変化を遂げた。グローバル化は妙なもので、国内と海外支店、日本企業と外国企業という枠さえも取り払う。米国「市場」のエキスパートか「(日本の)わが社」の1つの職種のエキスパートなのか。くわえて英語によるマーケーティングか、営業か、経理か、経営か・・ということである。
転職か社内移動か
本来ならば、大企業で総合職についた人は会社に雇われた訳だから、会社が指定する場所に移動し、職種にこだわらずに働くということである。しかし営業から出荷サービスに移るよりは、会社を替わっても営業で一つの地域で働き続けるというのが欧米の雇用だし、日本でも中小企業はそういう「機能」のために働き続けるのが通常である。特に夫婦共働きが更に増えれば、日本の大会社の年功序列と総合職は時間の問題でくずれて専門職種に変わってゆくだろう。
いろいろな生き方や考え方があると思うが、若いうちはサバイバルを賭けて小さな会社でそれを伸ばすことに賭けるほうがリスクはあり苦労もするが、私には面白いと分かった。幾つかの商品やサービスの選択で失敗もして挫折経験もつみ、立ち上がる工夫を通じそこそこに成功し自信もえた。残り時間が減ってきたら安定を望むなら少し大きな会社に移ればよい。
人だよりにはしたくないから、私は自分で創業し決めてゆこうと考えた。日本がそういう社会になれば、若い人はもっと自由に活き活きと生きられると思う。
機能の統合をできたアップル社
戦略で対抗するのに必要なものはすべてそろっているのに、なぜ、ソニーは敗けたのだろうか。ディジタル化の影響については次章で私見を述べるが、ここでは商品寿命のサイクルによる時間のズレと組織の細分化の問題に触れるにとどめたい。
ソニーに限らず部門ごとの独立採算制を採用している会社では、社内の部門間の連携で商品の相乗効果を生むのは難しい。
アート(歌詞・曲)部門を抱えているとCDやDVDの売上げが下がるから曲のばら売りはできない。ハードの自社工場をもっていれば、そこを使わないで外注にだせば工場の裏切り者である。それぞれの最適を追求する独立採算制では、優先選択が難しい好例である。付け加えれば、記録テープを造りながら、顧客のコピーを防止するような自社利益を優先させ消費者の要求を制限する思考も見えた。
アップル社はハードウエアー、ソフトウエアー、機器などのデジタル技術とコンテンツをアイチューンやアイポッドに機能統合した。これでアーティストへの著作権の支払い、巷にあふれる海賊版コピーの防止、いやそれより最重要な市場ニーズとして、欲しい一曲だけを買いたいという消費者の声にこたえ、好きな曲1ドルのばら売りでネットでダウンロードできる画期的な方法を考えて、ハードも殆ど使わず一挙に解決してしまったのだ。
飛躍することをいえば、議会が取締役会だとすれば、中央行政のトップは執行役員だから中央政府は決算報告書で事業計画とその結果報告だけにし、競争できる業種は地方自治体か民営でやる方向になるのではないか。どの工場が生き残るかは市場がきめるのだ。
飛躍することをいえば、議会が取締役会だとすれば、中央行政のトップは執行役員だから中央政府は決算報告書で事業計画とその結果報告だけにし、競争できる業種は地方自治体か民営でやる方向になるのではないか。どの工場が生き残るかは市場がきめるのだ。
転職者は元気な老後(30代からの転職が当たり前になる)
社会全体が転職を怖がっている感じがあるが、多くの人がいま勤める会社が天職だと考えていない。分からずに入社したが、チョット違うなと考えている筈だ。それは今述べた商品寿命で仕事がなくなる場合もあるし、40代前にポストが足りないことに気付くケースもあるし、50代になって先が見えてきて、社内転職か社外かという時期が来る。
『給与を半分に削られて、昨日までの部下と横並びにされて真面目に働けますか?』という人も多い。50代からやる気を失い10年も同じ会社にいたら、呆けたり、病気がちに成るリスクは高い。しかし他方で緊張感をもって頑張る人は、60代ではつらつとしている。意外だろうが『転職して元気になったね』という例が多い。だとすれば、早いところ他社に移って、若々しく新たなチャレンジをすることをお勧めしたい。同じ会社に一生働くことが幸せというのは私にはミステリーである。
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