2013年6月15日土曜日

13608契約とバランスですすめよう【023】

13608

契約とバランスですすめよう【023】


 売上げだけでスタンスを変えない                   

S・ハン チントン教授が〈日本の同盟に対する感覚はバランシング(=相手国と常に一定間隔を保ち、周辺国とバランス)させるのではなく、バンドワゴニング(最強国や勝ち組への追随)であった〉と指摘している。最近は中国への輸出額が増え、対米取引を追いこしたという。そうなると昨日までの米国派が、途端に「これからは中国経済を無視しては、日本は生きていけない」などと言いはじめる。なぜ「アメリカも中国も両方大切だ」といえないかが、もろさになっている。  

技術や市場の変化を敏感にとらえ利益を追求するビジネスマンは仕方ないとしても、国全体がビジネスマンになっては困る。それは、自国(自分)が中心で主役だという自覚が薄く、複数の価値観や団結が国内にないまま、会社人間で済ませてきたからであろう。

すこし長く住めば《商売に関係ない人と付き合う必要はない》と自己利益だけの人と、この国で商売をできるのは有難いのだから、少しは米人のためにもなることをしたい》というオープンな意識になった人とに分れるようだが、後者であって欲しい。


知らず知らずに陥りやすいのは、職位ランクや年齢などを離れられない日本式の心理《障壁》である。障壁と思わず海外もそれで当然と考える。
それよりは何処まで広い範囲の話ができるか、本業の周辺で相手が興味を持ちそうな新規分野の話ができるかが鍵である。そこで相手の琴線に触れることができれば、これからの社会でもっと広範な活躍ができると思う。

 契約しても定期点検しないと実行は形だけになる

フォロー(点検)しなければ実行されないと考えるべきで、会社経営でも相手が「やります」と言ったからといって、できていると思うのは間違いである。どこまで進んでいるか、少なくとも半年か4半期ごとに点検すべきである。実行に移されていない場合も多いし、適度に苦情をいわれたり誉められたりしたほうが相手も張り合いがある。

納期どおりなら、顧客側(役所でも)が相手をご馳走して帰せば供応にはならない筈だ。そこで更に業界情報なども入るから「ご苦労様」で帰すのは勿体ない。《定期的に見にいき、仕事がすすんでいる場合は誉めるべきだ》とするほうがいい。見にいくのを面倒臭がる監督者ほど、仕事がはかどっていないことを目にし「約束が違う!」などと騒いだりする。《言って聞かせ、やって見せ、やらせてみせて、誉めてやらねば、人はやらないそう思っていたら間違いない。


安保条約があれば、どんなときでも米国が救ってくれるわけではない。協定(契約書)に記載されていることは要求してよい程度のものと見るべきで、100%盲信し命をあずけてはならない。自国に都合のよいこと以外は忘れていると思ったほうがいい。それゆえ毎年実行を確認し、実演を要求し、実行を点検すべきだろう。機器を買いそろえ設置し担当者を付ければ自動的に物事ができるわけではなく、定期点検と練習などフォローが欠かせない

また相手国の代表者や責任者が代わったら、新任者がどう考えるかその都度確認しなければならない。前任者との契約があっても、そろそろ修正したいと考えている場合もある。

2006年から毎年秋に日本の首相は代わったが、周辺国はどの程度日本の政策が変わるかを確認する必要がある。潜水艦で国境ぎりぎりまで乗り込んだり、ミサイルを飛ばしたりすることで新リーダーがそれにどんな対応をするか、どこまで脅せるかを確かめる。
脅しが収入になると考えればである。それは必ずしも侵略しようという意図からではなく、テストして確かめているわけで、それはそれで事実に基づいて判断したいという理屈に合ったもので、こういう考え方が論理的なのだ。日本人にはイラつくやり方である。だから、こちらもその度ごとに大声で相手の行動を非難し、国連などに提訴しなければならない。

独断と偏見の批判を恐れずにいえば、在日外国人を日本国民として扱い、差別を禁じ日本への愛着をます扱いをすることが、北の1番怖れる国内政策ではあるまいか。 

③ 総てを網羅するムダを避ける

絞り込まないと膨大なムダがでるが、ついでにもう1つ非効率と感じることを付け加えると、『これからは環境らしいから、環境関連の新技術の情報を集めよ』という指示がくる。環境関連の機械なのか、2酸化炭素をへらす技術か、エタノールかと聞きなおすと、『何でも全部だ』という答えがくる。読みきれないほど膨大な資料が送られる。受け取る方も絞込みの仕分け作業は大変である。残業をして膨大な選択肢を纏めている人たちには気の毒だが、何でも1、2ページに纏まらないものは、読んだ相手が把握できないからムダであり、ものが決められない会議の遠因でもある。
 
最初に何をやるかを考える戦略思考がなく「集め漏らした」という批判を避けるほうが優先されると、作業量は何倍も時間がかかり、集めても9割が捨てられ、ただみなが忙しくなる時間のムダがある。米国の管理職のように、医療や食品は関心がないとか、エネルギーと樹木だけとか目的・範囲・必須条件を明確にするだけで、作業は10分の1になる。課長以上の管理職は、ぜひ絞ることと、その理由付けを考える習慣をお奨めしたい。

ここでも確率が役立つ。何かを削って『こんな大事なことをなぜ削った』という批判をおそれてはものは絞れないし、判断する種類数がふえると時間ばかりかかり決められないのだ。どうせ全部をやれる時間も予算もないから、取捨選択には確率で絞るのが合理的である。学校ではないから衆知させるのに会議を開くよりはメールで送り、読んでから出席してもらえばよい。決めない会議はムダである。

 契約的な社会と対応社会の違い=腐敗の防止策

約束はしたがそれを守れない事態が発生したらどうするか。たとえば売買契約の場合、為替レートが5%以上も動くとか、2008年のように原油価格が2割以上急騰するなどだ。価格を決めた際の前提条件が大幅に変動したらどうするか。
例外事項を事前に考えてリスト化し、各々の対応策を決めておくのが西欧式の契約である。これの優れている点は非常時や突発事故が発生した際に強いことである。相手がどんな辺境の地にあっても指示が予め届いている。マニュアル社会と言えばそのとおりだが、真夜中に指示を仰がなくても実行できるシステムである。

日本式の場合は《事情変更の原則》という逃げ道があり、状況が大きく変わったときは「信義誠実の原則」で話し合う条項がある。信義誠実というと聞こえはよいが、はっきりしない場合、中立的な立場の第3者が判定者として加わらなければ、役者の多い大会社に有利な決定となる。また起きては困ることが何かリストアップされていなければ、問題と解決を先延ばしにしているに過ぎない


これでは対等な契約とはいえず、あまり意味がない。結局は株の持ちあいをしたり資本提携のある会社になり、身内や親類しか信用できない華僑と変わらない。気づかず中華文化の影響下にあるのかも知れないが、親類(同属)が多い会社が勝ちということで、大会社・グループ指向になりがちだ。つまりどこかで私的にしっぺ返しができる関係でしか相手を信用できないという点で、法治としてよりは私的制裁が強制力になる社会となる。

信頼度を高めるには、社内での上司から部下への指示でも、本社から支社への指令でも《どの範囲で何を任せるから、その範囲内ではあなたが決定し、その結果をどの頻度で報告しなさい》というのが1種のルール化と権限の委譲である。中国やインドが急成長し大市場が現出したが、アジアの情と力だけのやり方でなく、西欧型の信頼を契約にするやり方が社会の腐敗防止には欠かせないし、法治国家になることが中国に飲み込まれない防壁になると思う。

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