1つだけ、米国市場では大きな事業になる可能性がありながら中断されたものに、連続地下壁工事がある。
日本では全国で広く使われ、地下鉄や大型LPGタンク周囲の壁を先に堀り、安定液を満たし、鉄筋かごを入れ生コンを流し込んで壁を完成させる工法である。
なぜこの工法がすごいかと言えば、少し土木がわかる必要がありますが、一寸高い建物は、地下3階くらいの施設を必要とする。駐車場、非常時発電機など。すると地下3階分くらい、約10~15メートルの穴を掘る。外から土砂が崩れてくると隣接の道路や建物が崩れるので、止めるために土留めの壁がいる。この隣接壁に1メートル位にぎりぎりで建てられること。(従来の工法だとシートパイルのような鋼矢板を使っても、土圧でたわみ、土が動き周囲の道路や床がひび割れたりする。)
欧州でポピュラーだが、日本の技術は垂直精度が高く、仮設の土留(どどめ)でなく完成した建物の構造物の一部として使えるものだ。メーカーと一緒に設計者のための300ページの教科書までつくり、土木設計者やく500名を集めてのセミナーも大成功と言われた。
問題はこの装置・システムは高額なため、米国では使用頻度が少なく、レンタルでしか提供できなかったこと。
もう一つは、考えれば当然ながら、商社の機械部は当時は販売業であった。工事業者になることも、レンタル会社を始めることにも反対で、この事業の引継ぎ者がなかったのである。
シカゴでは衛生局のトンネル用立抗、ウォータータワープレイスの地下壁、NYではジャマイカ駅の工事(写真)にも、S建設により走る列車の横での工事実績まで作りながら、別事業部に出来なかったのである。
個人で事業を始めるには総システムが1.5億円くらいで、銀行も融資せず高価すぎたのだ。
という訳で、自分では最大の努力をしたつもりだが、事業化できなかったものである。
今は別の総合商社が取り上げて、事業展開をしているようなので、発展を祈っている。一生懸命に私に工事積算などを教えてくれた1級建築士S社のK氏は、ケニアで学校や病院を建設したあと、ロス近郊の開発会社の社長になって活躍しておられる。
このシステムを使えば、立て込んだ電力会社の周辺での地下壁の建設などは、大きな玉石がない地層なら使えるのではないかと思う。
(商社時代に後継者ができた事業は、建機販売事業部、マテハン機器事業部、それに鉄鋼事業の支援をした切り板工場などで、これらは80年代に何れも商社から独立した別会社となった。)
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